在宅においても,外来患者と同様に末梢静脈輸液を実施することがある。ただし在宅では,家族など非医療者が点滴中の状態観察や安全確保を行うこと,点滴トラブル発生時に迅速・適切な対応が難しいことが大きな違いのひとつである。そのため,在宅での輸液は,患者・家族に対する負担感の増加やリスク増加の可能性に注意が必要である。
また,在宅医療対象者には高齢者,認知症患者や緩和ケア患者も多く,静脈ルート確保困難例や点滴中の事故抜去のリスクも高くなる。そのため,在宅医療では皮下輸液(hypodermoclysis)が行われることも少なくない。
上述のように在宅での輸液の特徴をふまえ,外来以上に輸液の必要性を吟味し,経口・筋注・静注など,より安全な投与経路の検討なども必要である。
また,皮下輸液は中等度までの脱水症,血管確保が困難な高齢者,がんなどの終末期緩和ケア患者などが良い対象である。末梢静脈点滴と比較した皮下輸液の主な利点と欠点を以下に示す。
・手技が簡単
・点滴中,四肢は自由に動かせるためより快適(抑制が不要のことも多い)
・血流感染や過剰輸液による肺水腫などのリスクが低い
・事故抜去の際も出血や感染のリスクが少なく対処が容易
など
・急速輸液が不可能であり,ショック治療などには不向き
・大量輸液も難しく,現実的には2000mL/日程度が限界
・投与できる輸液製剤,薬剤の制約が多い
など
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