近年のわが国の医療政策においては,病院の機能分化と平均在院日数の短縮化が強力に進められてきた。その動機と目的は,①急性期,回復期といった病気のステージにあわせて集中的に適切な医療資源を投入することにより,より効果的な治療・ケアを行う,②住み慣れた家,生活圏での療養に早期に移行し支援することが,本人や家族の安心や生活の質(QOL)を高めることになる,③医療費の抑制を図り,医療保険制度の永続的な維持を可能とする,といった点にあると思われる。その結果,平均在院日数は,1990年代は全病床で40日を超えていたものが,2018年には27.8日,一般病床では16.1日まで短縮している。
退院後の自宅や有料老人ホーム,グループホームなどの施設での在宅療養生活を安定して支えるためには,医療・介護に関わる多職種が入院後早期から連携し,家族面談,退院調整,カンファレンスを積み重ねていくことが大切である。
一方で平均在院日数の短縮によって,こうした調整の時間を十分とる間もなく退院に至ってしまい,結果的に病状や日常生活活動(ADL)を悪化させて早期に再入院になってしまうような残念なケースも散見される。したがって,入院早期から病院の退院調整・連携担当者は本人・家族の意向を早期に聴取し,地域の在宅医療・看護・リハビリテーション・介護に関わる多職種やケアマネジャー・相談員らとの連携が図れるように,日頃から顔の見えるネットワークを構築し,迅速な対応が可能なように準備しておく必要がある。
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