膝関節軟骨の変性と破壊に滑膜炎を伴い,軟骨下骨の硬化や関節辺縁の骨棘形成等の増骨性の変化を生じる退行性疾患である。病初期より関節裂隙の疼痛を訴え,進行すると内外反を伴う(内反が多い)関節変形を生じ,関節可動域の低下,キネマティクスの異常により,歩行能力の低下等のADL障害を起こす。
単純X線撮影で,関節裂隙の狭小化,膝関節の内外反変形(FTA 177°以上の内反や,172°以下の外反),軟骨下骨の硬化像,顆間隆起の先鋭化,辺縁部の骨棘形成といった特徴的な所見を確認する。あわせて,関節裂隙の圧痛,関節可動域の低下,膝蓋跳動等の理学所見を確認する。
また,「歩き始めに痛むが,歩き出してしまえば痛みが少し和らぐ」「階段は上りよりも下りで痛みが強い」といった,特徴的な痛みの訴えにも注意する。さらに,関節リウマチや,変形性膝関節症によく似た疼痛を訴える疾患である特発性大腿骨顆部壊死症の鑑別も大切で,必要に応じ採血検査やMRI検査,関節穿刺を施行して確認する。関節穿刺では,変形性関節症では,黄色で澄んだ曳糸性のある正常関節液に近い関節液が採取される。これらの結果から,総合的に診断する。
変形性膝関節症との診断を得たら,Kellgren-Lawrenceの分類(K-L分類,表)1)に従い,単純X線写真を用いてグレーディングを行う。疼痛の程度と単純X線写真のグレーディングには相関がないとされるが,治療を組み立てる上で重要な情報であるので,グレーディングを行うことを勧める。
大腿四頭筋筋力強化訓練は全病期で適応となる。ただし,関節症を進行させないように,非荷重下に行うことが重要である。
大腿四頭筋筋力強化訓練のみでは症状に改善が得られない場合は,NSAIDs投与を中心とした薬物治療を追加する。この際,腎機能の低下や肝機能障害を生じないかどうか,採血検査や検尿を定期的に行い観察する。また,患者は高齢者が中心であるため,薬剤投与による消化管障害をはじめ,各種合併症の予防対策をしっかりと行う必要がある。
薬剤投与でも疼痛の緩和が得られない場合は,ヒアルロン酸の関節腔内投与を考慮する。ヒアルロン酸は軟骨細胞に直接的に作用して効果を発揮するため,荷重部の軟骨の大部分が変性し消失しているようなK-L 4期に投与を行っても,その効果は得られにくい。K-L 3期以前,特にK-L 1~2期がよい適応となる。また,ヒアルロン酸の効果は,連続投与で頭打ちとなるため,何週間も漫然と投与するようなことはせず,1週間または2週間間隔での連続5回投与を1セットとし,1セットごとに投与をいったん終了し経過を観察する。そして,効果が薄れてきた場合,次のセットの投与を検討する。
これまでに述べた保存的加療でも十分なADLの改善が得られない場合,手術による加療を考慮する。ただし,変形性膝関節症は,疼痛の強い時期と弱い時期を交互に繰り返しながら徐々に進行するため,疼痛が強いからといってすぐに手術を決定するのではなく,数カ月間は経過を観察し,疼痛の改善が得られないことを慎重に確認して手術に進むのがよい。通常K-L 1期は手術適応とならないため,K-L 2期以降の手術療法について以下に説明する。
残り1,341文字あります
会員登録頂くことで利用範囲が広がります。 » 会員登録する