【質問者】
日比泰造 熊本大学大学院生命科学研究部小児外科学・ 移植外科学講座教授/ 熊本大学病院移植医療センター長
【どんな膵癌でも主治療は化学療法。手術はあくまで補助療法】
1980年代頃まで追求されつづけてきた「メスで膵癌を治す」という挑戦は,偉大な先人の卓越した技術をもってしても,残念ながら良い結果を生んだとは言えませんでした。どれほど繊細な神経叢郭清,徹底的なリンパ節郭清を行ったとしても膵癌細胞は必ずと言ってよいほど遠隔臓器に再発してきた事実を真摯に受け止め,「膵癌は全身疾患であり,手術などの局所治療のみでは完治させることはできない」ということを,まずはしっかりと認識する必要があります。
2019年のASCO-GI(American Society of Clinical Oncology Gastrointestinal Cancers Symposium)で発表された,術前ゲムシタビン+S-1の優越性を示したPrep-02/JSAP05試験1)の結果は膵癌治療の歴史において大変意義深く,貴重な一歩を踏み出したと思っていますが,「膵癌=全身疾患」という事実を鑑みると驚くには値しないのかもしれません。全身疾患なのであれば第一選択(=主治療)はやはり薬物療法であるべきだろうと思いますし,個人的には切除可能膵癌であってもさらに強力な化学療法が望ましいのではないかと思っています。
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