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くも膜下出血[私の治療]

No.5067 (2021年06月05日発行) P.38

杉山 拓 (北海道大学病院脳神経外科)

寳金清博 (北海道大学脳神経外科名誉教授)

登録日: 2021-06-05

最終更新日: 2021-06-01

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  • くも膜下出血(subarachnoid hemorrhage:SAH)は,外傷や炎症,その他の脳血管奇形などの結果として生じることもあるが,通常は脳動脈瘤が破裂した結果として生じるものを指す。破裂動脈瘤は,部位別には前交通動脈瘤,内頸動脈-後交通動脈瘤,中大脳動脈瘤が多い。50~70歳代に多く,女性に多い傾向がある。迅速な対応が必要な,致死的な病態である。

    ▶診断のポイント

    労作時に突然発症する頭痛・嘔吐および意識障害が最も典型的な症状であり,項部硬直を伴う。重症例は心肺停止状態になる場合もある。発症時の意識障害の程度は最も転帰に相関する因子であり,これによる重症度分類が広く用いられている。modified World Federation of Neurosurgical Societies(m-WFNS)分類を表に示す。

    SAHが疑われた場合,初期診療の後,速やかに頭部CTを撮像し,これを診断する(図)。SAHと診断された場合,速やかに破裂脳動脈瘤を検出する必要があり,CT angiography(CTA)や選択的脳血管撮影(DSA)などを実施する。

     

    ▶私の治療方針・処方の組み立て方

    再出血と遅発性脳血管攣縮が発症後に転帰を悪化させる因子であり,特に再出血はきわめて高率に転帰を悪化させる。再出血は,発症早期(発症後24時間以内)に多いとされ,迅速な対応が必要である。初期診療では血圧管理や鎮痛・鎮静を速やかに開始し,可及的速やかに再出血予防のための外科的処置を行うのが原則である。術後も,遅発性脳血管攣縮などの治療を約2週間継続して実施するのが通常である。

    専門的判断が必要であり,小規模医療機関は,初期診療後に大規模医療機関へ患者を速やかに転送すべきである。転送中も血圧管理や鎮痛・鎮静が必要であり,医師の同乗が望ましい。

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