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【一週一話】ノロウイルスワクチン実用化の可能性

No.4748 (2015年04月25日発行) P.53

片山和彦 (国立感染症研究所ウイルス第二部第一室室長)

登録日: 2016-09-08

最終更新日: 2017-02-20

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  • ノロウイルス(NoV)は口から食物,水などとともに体内に侵入し,1~2日かけて腸管で増殖する。下痢,嘔吐,吐き気,腹痛を主症状とするが,発熱,頭痛,筋肉痛を伴うこともある。稀に,1日20回に及ぶ激しい下痢を起こすこともあり,入院,点滴などの処置が必要になる場合もある。

    ヒトノロウイルス(HuNoV)は,集団感染や大規模な食中毒を引き起こすことでも知られており,毎年,世界中で数十万人に上る感染者を出し続けている。このような特徴から,“消化器系疾患におけるインフルエンザ”などと呼ばれることもあり,ワクチン開発が期待されている。

    NoVにはGⅠ~GⅤまで5つの遺伝子グループがある。ヒトに感染するのは主に遺伝子グループGⅠ,GⅡのNoVである。遺伝子グループGⅠには9種類,GⅡには19種類のHuNoVの存在が認められている1)が,異なる遺伝子型のHuNoVは,抗原性が互いに異なると考えられている。

    ボランティアの成人に対する感染実験の結果,GⅠ.1の感染を経験した被験者は,GⅠ.1の再感染を受けにくいとする報告がある。しかし,異なる遺伝子型の感染を受けると,再感染が容易に成立するとの報告もある。

    これらの報告から,ヒト体内にはNoVの感染防御,発症,中和と排除を行うための免疫応答があると推測できる。その一方で,1つの遺伝子型に対する免疫応答は,抗原性の異なる別の遺伝子型に対してあまり効果がないことを示唆している。つまり,感染・発症に対する十分な効果を得るには,インフルエンザウイルスのように,どの遺伝子型が流行するのかを予測する流行予測と,交差性を考慮した多価ワクチンの開発が必要だと考えられる。

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