新型コロナウイルスの感染拡大から1年以上経過していますが,医療機関や患者さんがナーバスにならざるをえない状況が続いています。
コロナ診療とは直接関係のない(対応していない)医療機関でも,コロナ感染が疑われる患者さんが来院しないとは限りません。ただし,コロナ感染が疑われる患者さんが来院した場合,診療拒否をすると応招義務違反となる可能性があります。また,コロナ感染拡大以降,コロナ診療に直接関係のない医療機関でも風評被害や差別に悩まされ,売上にも影響しているところがあります。風評被害には,どのように対処していけばよいのでしょうか?
コロナ診療に対応していないのに,コロナ感染が疑われる患者さん(発熱,海外渡航歴などがある方)が来院した場合はどうしたらよいでしょうか?
いくつかのケースにわけて解説します。
厚生労働省の通知「新型コロナウイルス感染症が疑われる者等の診療に関する留意点について(その2)」 1)では,次のように記載されています。
つまり,単純にコロナ感染が疑われる症状や海外渡航歴を理由に診療拒否すると,応招義務違反に問われる可能性があるということです。
しかし,コロナ感染者に対する診療が困難な場合は,適切な医療機関への受診を勧奨することや,保健所の指示に従うように誘導すれば問題ない,と読み取れます。
なお,この通知以前に日本医師会は,富山県医師会からの新型コロナウイルス流行期における応招義務についての質問に対し,次のような回答をしています2)。
「『応招義務』については医師法と絡み,回答が難しいところです。
2020年1月10日付日医発第1006号にて『応招義務をはじめとした診察治療の求めに対する適切な対応のあり方等について 』を発出しているので,参考にして下さい。
医師法第19条1項では,『診療に従事する医師は,診察治療の求めがあった場合には,正当な事由がなければ,これを拒んではならない』との『応招義務』に関する内容があります。
同通知の『個別事例ごとの整理,④差別的な取扱い(中略)』に『ただし,第1類,第2類感染症等,制度上,特定の医療機関で対応すべきとされている感染症に罹患しているまたはその疑いのある患者等についてはその限りでない』 とあります。新型コロナウイルスは第2類感染症に分類されるため,『感染症に対応できないこと』を理由として,診療せず,帰国者・接触者相談センター経由で帰国者・接触者外来への受診を勧めることは義務違反にはならないと解釈されるのではないでしょうか」
日本医師会の回答を見ても,コロナが疑われる患者さんについては診療しなくても,適切な医療機関に誘導すれば問題ない,とするのが一般的であると考えられます。
院内掲示やホームページなどで,コロナ感染が疑われる方には診察を控えてもらう旨を周知することは,応招義務違反に当たるのでしょうか?
当然,これから来院しようとする患者さんについても,上記と同じ理屈が通ると考えることができるでしょう。
つまり,本人から帰国者・接触者相談センターや保健所などに連絡するように,院内掲示やホームページに記載したほうがよいということです。
そのほか,診察を控えてもらう条件(発熱,風邪症状,濃厚接触者,2週間以内の海外渡航など)や,オンライン診療に対応できるようでしたら,その案内などを記載しておきましょう。
コロナ以外の症状で来院する患者さんに,安心感を与えることができます。