確定申告をした後で,納めた税金が多すぎた,もしくは還付される税金が少なかったことに気づくケースがあります。
その場合,「更正の請求」という手続きをすれば,払いすぎた税金を還付してもらえることがあります。更正の請求とは,更正の請求書を提出することで,税務署がその内容の検討をして,納めすぎの税金があった場合(繰越金額を含む)に,減額更正をして税金の還付をする制度です。所得税だけでなく,法人税,消費税,相続税,贈与税などにも適用されます(国税通則法第23条等) 1)2)。
今回は更正の請求の条件,注意点,手続きについてお伝えします。
その他,確定申告で知っておきたい豆知識(クレジットカード納付や寄付金控除)についてもお伝えします。
更正の請求は,税法の規定に従っていなかったり,計算を間違えたりして,過大申告となった場合に採用できる手続きです。
よくある過大申告の例を挙げます。
しかし,次のような場合は、税法の規定に従っていなかったり,計算を間違えたりしたわけではないので,更正の請求はできません。
税金を払いすぎたために更正の請求をする際は,主に次の5点について注意して下さい。
更正の請求は,「手続きをすれば,必ず認められる」というわけではありません。
たとえば,ある開業医の先生は,お正月に看護師やスタッフの家族に豪華なおせち料理を贈っていました。これを“福利厚生費”としたかったのですが,税務署には“交際費”と指摘され,経費として認められませんでした。
また,税額計算が法律の規定通りでなかったり,訂正内容を証明する証拠がなかったりする場合は,請求が却下されてしまいます。
つまり,申告書の内容などを税務署で確認し,妥当と判断された場合のみ請求が通ります。
なお,2012年2月2日以降から,更正の請求を行う際には「事実を証明する書類」の添付が必要となっています3)。
また,更正の請求が認められないことに納得がいかなかった場合,不服を申し立てる権利 が認められています4)。処分の通知を受けた日の翌日から3カ月以内に,税務署長に対して「再調査の要求」を行います。それでも納得がいかなければ国税不服審判所長に対して「審査請求」を行い,さらに不服があれば裁判所に訴訟を起こすという流れになります。
更正の請求の申請は,その年度の確定申告期限の最終日より5年までと定められています1)。
たとえば2021年度の確定申告の場合,2027年3月15日が更正の請求の期限日になります。
ただし,法人税で純損失等の金額について更正の請求をする場合には,2018年3月31日までに事業開始した場合は申告期限が9年,2018年4月1日以降に事業開始した場合は申告期限が10年 となります5)。
なお,確定申告の期限内に間違いに気づいた場合は,更正の請求ではなく,通常の確定申告書を訂正して下さい。
更正の請求を行っても,その請求前に確定した税額の納付義務は課せられたままの状態のため,原則として徴収の猶予は認められません。猶予が認められるのは,災害,盗難,納税者やその家族の病気やケガ,事業の休廃業や著しい損失などの事実がある場合のみです6)。
「更正の請求が認められるはず」と思い込んで,更正の請求前に確定した税額を納めないでいると,滞納処分を受ける可能性があります。
税務調査が入った場合に,更正の請求に関して確認されることもありえます。
そのため,更正の請求をする際は,できる限り証拠資料を残しておくようにしましょう。
更正の請求で虚偽申告をした場合,処罰の対象となります。具体的には,1年以下の懲役 または50万円以下の罰金が科せられます3)。