粘液囊腫とガングリオンは,ともにムコ多糖を含有する粘液を内包した軟部腫瘍である。両者の区別は,臨床的には関節包との連続性,病理学的には囊腫壁の有無によってなされる。用語の異同弁別には議論があり,日常的には区別があいまいになっている例もある。
ガングリオンは,関節包もしくは腱鞘のヘルニアとされ,線維性結合組織の壁構造を有する囊腫である。手関節背側が好発部位で,男女比は1:3で女性優位に発生する。
粘液囊腫は壁構造を有さない偽囊腫であり,指趾粘液囊腫と口腔粘液囊腫に大別される。
指趾粘液囊腫は,線維芽細胞によるヒアルロン酸の過剰産生に由来するmyxomatous typeと,骨棘の刺激等で関節包にヘルニアが生じて発生するganglion typeに分類される。後者とガングリオンは,壁構造の有無によって鑑別可能とされる。好発部位は爪根近傍からDIP関節背面で,機械的刺激が誘因となる。爪根に生じた場合は爪甲縦溝を伴う場合がある。男女差・左右差はない。
口腔粘液囊腫は,唾液腺から漏出したシアロムチンに対する炎症性肉芽組織反応による偽囊腫(mucous extravasation cyst)である場合と,唾液腺の排泄導管が拡張して生じた囊腫(mucous retention cyst)である場合があり,圧倒的に前者が多い。半数以上は下口唇の犬歯が当たる粘膜面に生じ,機械的刺激が誘因とされる。男女差はなく,青年期に好発する。なお,舌下腺・顎下腺に由来する口腔底の粘液囊腫はガマ腫とも呼ばれる。
ドーム状に隆起した単発の弾性軟の結節で,色調は正常皮膚色~淡紅色(粘膜に生じる場合は赤色~青色)である。粘液が透見される場合は診断が容易で,照明を当てると,さらにその所見が明瞭になる(flash-powered transillumination)。囊腫を穿刺すると,透明~琥珀色の粘液が排液される。
視診・触診のみでは診断が容易でない場合や,関節包との連続性を知りたい場合には,画像診断も併用する。超音波検査では,均一な低エコー領域として描出され,血流はない。造影MRIでは,T1強調像で低信号,T2強調像で高信号を示し,内部造影効果のない均一な囊腫様病変として確認される。
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