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結節性紅斑[私の治療]

No.5076 (2021年08月07日発行) P.38

谷川瑛子 (慶應義塾大学医学部皮膚科学教室准教授)

登録日: 2021-08-08

最終更新日: 2021-08-03

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  • 結節性紅斑(erythema nodosum:EN)とは,下肢伸側に多発する局所熱感と疼痛を有する浸潤性紅斑または紅色結節のことを言う。上気道感染が先行することが多く,その他様々な基礎疾患によって生じる脂肪組織を中心とした反応性の炎症性病変である。

    ▶診断のポイント

    【症状】

    成年女性の両下肢脛骨前面に多発する1~10cm大までの疼痛を有する紅斑または結節(図)である。潰瘍は形成しない。時に38℃台の発熱と関節痛などの症状を有する。

    【検査所見】

    白血球上昇,CRP上昇がみられる。病理組織学的所見としては,脂肪小葉間隔壁を中心とした好中球,リンパ球による細胞浸潤による脂肪織炎(septal panniculitis)の像を呈する。

    【特徴】

    上気道感染(特に溶連菌感染症など)を契機に発症することが多く(溶連菌以外には,Yersinia,Salmonella,Campylobacterなどが知られている),ほかにも様々な基礎疾患の随伴症状として出現する。

    重要な鑑別疾患に硬結性紅斑(臨床的に潰瘍を形成する),血管炎などがある。注意すべき基礎疾患に炎症性腸疾患(潰瘍性大腸炎,クローン病),サルコイドーシス,ベーチェット病,Sweet病,リンパ腫,結核,また薬剤の使用などがある。原因不明なものは「突発性EN」,基礎疾患を有するものを「症候性EN」と言う。

    好発部位は両下肢伸側,時に大腿部または上肢に生じることもある。通常2~6週間続き,個々の皮疹は2~4週で陥凹,瘢痕を残さずに消退する。

    ▶私の治療方針・処方の組み立て方

    詳細な問診とともに既往・合併症の有無を確認し,咽頭の診察と培養検査を行い,その内容に応じて血液検査を実施する。基礎疾患との鑑別が必要な場合は皮膚生検(血管炎との鑑別には蛍光抗体直接法)を実施後,結果を得るまでステロイド内服以外の可能な治療を開始し,同時に病状に応じて画像を含む全身検索を行う。

    【治療上の一般的注意と禁忌】

    基礎疾患が背景にあると予測しうる場合は対症療法を行いつつ,皮膚生検を実施して,鑑別すべき疾患を確認する。検査を実施しないで,安易なステロイド投与は避ける。

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