【質問者】
江口 晋 長崎大学大学院移植・消化器外科教授
【メリットは脈管操作と視野の安定性。課題はデバイスの改良と至適術式の抽出】
過去20年間の肝臓外科の歴史においてepoch-makingな業績のひとつは,低侵襲肝切除の開発・普及と言えます。
腹腔鏡下肝切除はこの15年で爆発的に普及し,ある一定の基準を満たした腫瘍背景と術者であれば,開腹手術に比べて,創部縮小のみならず,腫瘍学的根治性を失わずに出血量,合併症率,入院期間を低減できることが示されています。しかし一方で,技術的難度の高い術式,たとえばS7,S8,S1など頭背側領域腫瘍に対する術式,高難度解剖学的切除術式,脈管再建を伴う肝切除などは,腹腔鏡手術では定型化,標準化に至っていません。一方,ロボット支援下肝切除は新しい低侵襲肝切除のプラットフォームで,世界的にも最近アジア,イタリア,米国を中心に増加傾向にありますが,まだ一般化されておらず,わが国でも保険収載に至っていません。
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