【他のシステムでの情報還元が進み,包括的な情報提示が困難となってきたため】
感染症発生動向調査は,伝染病予防法の時代に始まり,1999年4月からは感染症法に基づく施策として位置づけられています。この調査には全数把握,定点把握のそれぞれの対象疾患があります1)。その分析結果の公表は法的に明記され,具体的には,感染症発生動向調査週報(IDWR),病原微生物検出情報(IASR)を中心に国民,医療関係者に還元されています。
新興感染症である新型コロナウイルス感染症(COVID-19)は,新型インフルエンザ等感染症に位置づけられる全数把握対象疾患であり(2021年7月現在),感染症発生動向調査の一部として国民に対して還元される必要が当然あります。当初IDWRでは,COVID-19においても,現在他の感染症で用いられている感染症サーベイランスシステム(NESID)へ入力された情報をベースに,週単位での情報の還元を行ってきました。
しかし,パンデミック(世界的大流行)という特殊な状況が進展するに従い,国内では従来のシステムに比べ,迅速性や柔軟性により重きを置いたHER-SYS(新型コロナウイルス感染者等情報把握・管理支援システム)や,各自治体がウェブサイトで公表している数等を積み上げた情報により,COVID-19の全体像が把握され,国民への還元や専門家による迅速な分析の対象にもなってきました2)。そのような状況から,一部自治体によりNESIDにも入力が継続されてはいましたが,国全体の包括的な情報として提示することが困難となってきたとの判断により,IDWRではCOVID- 19の週単位の情報還元を2021年第10週(3月17日集計分)をもって終了しました。
【文献】
1) 厚生労働省:感染症発生動向調査について.(2021年7月22日閲覧)[https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000115283.html]
2) 厚生労働省:国内の発生状況など.(2021年7月22日閲覧)[https://www.mhlw.go.jp/stf/covid-19/kokunainohasseijoukyou.html#h2_1]
【回答者】
砂川富正 国立感染症研究所実地疫学研究センター長