日本小児科学会、日本小児感染症学会など関連5学会が合同で、「小児COVID-19関連多系統炎症性症候群(MIS-C/PIMS)診療コンセンサスステートメント」を作成し、5月に公表した。どのような病気なのか。同作成委員会委員長で、浜松医科大学小児科教授の宮入烈氏に聞いた。
MIS-C/PIMSは、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に感染してから2~6週間後の回復期に、川崎病を疑わせるような多臓器に強い炎症を起こす病気です。症状は、発熱、腹痛、下痢、全身臓器の障害、特に心機能の低下がみられるのが特徴です。発疹、結膜炎、粘膜病変を生じることもあるところが、川崎病と似ています。
ただ、MIS-C/PIMSは、CO VID-19感染後の回復期に、21歳未満の人に起こる新しい疾患概念であり、川崎病とは別の病気と位置付けられています。
一つは、発症する年齢層の違いです。川崎病は4歳以下に多く、発症年齢中央値が2歳なのに対し、MIS-C/PIMSの発症年齢中央値は8~9歳で、10代でも発症しています。もう一つ大きな違いは、川崎病が日本を含む東アジアに多いのに対し、MIS-C/PIMSはアフリカ系、ヒスパニック系、カリブ系の人に多いことです。
症状についても川崎病とは異なり、腹痛、下痢などの消化器症状を伴うことが多く、急速に心不全、ショック症状を起こしやすいことが報告されています。検査値では、川崎病よりも血小板数とリンパ球の減少症例が多く、海外の報告では68~95%にトロポニン値上昇、31~58%に左心機能低下がみられています。MIS-C/PIMSでは7割の患者さんが集中治療管理され、ECMOが必要になる場合もあります。