造血幹細胞移植は,移植後生着までの好中球減少に加え,免疫抑制薬の使用などがあるため,真菌感染症のハイリスクと考えられます。現在は,抗真菌薬が多数開発され,アゾール系薬4剤フルコナゾール(FLCZ),イトラコナゾール(ITCZ),ボリコナゾール(VRCZ),ポサコナゾール(PSCZ)とキャンディン系薬ミカファンギン(MC FG)は造血幹細胞移植時の真菌予防で保険適用となっています。これらの薬剤はそれぞれ特性を持っていますが,どの薬剤を使用すればよいか迷う場合があります。そこで自家移植,同種移植も含め,それぞれの薬剤の使いわけのご教示をお願いします。
九州大学・宮本敏浩先生にご回答をお願いします。
【質問者】
角南一貴 岡山医療センター血液内科臨床研究部長
【患者真菌症リスクと抗真菌薬スペクトラムと副作用を考慮して予防投与を決定】
造血幹細胞移植後の真菌症発症率は,自家移植で1%程度,同種移植で6〜10%程度と報告されています。同種移植ドナーソースが非血縁者である,あるいはヒト白血球抗原(human leukocyte antigen:HLA)不一致度が増すと,真菌症発症率が上昇します。移植前処置の軽減やHLA半合致移植の導入により,高齢者などハイリスク例にも移植適応が拡大し,真菌予防策は重要性を増しています。「深在性真菌症の診断・治療ガイドライン 2014」では,同種移植患者では高リスクとして抗真菌薬の予防投与が推奨され,自家移植患者では中間リスクとして予防投与を検討する,とされています。対象にする真菌は,発症頻度からアスペルギルス,カンジダが重要です。
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