【質問者】
加藤悠太郎 藤田医科大学総合消化器外科教授
【動脈合併膵切除術は集学的治療の一環として行うべきである】
膵癌は解剖学的に総肝動脈,上腸間膜動脈,あるいは腹腔動脈の周囲神経叢や血管壁への浸潤を頻繁に認めます。一部の過伸展例を除いて,現代の血管外科技術を駆使すれば,動脈の合併切除・再建を行うことは可能です。しかし,これまで多くの臨床研究により,主要動脈の切除・再建を伴う膵頭十二指腸切除術は,術後の膵液瘻に伴う重篤な合併症が高率であり,また,早期の再発により長期予後も得られにくいことが報告されてきました。膵体部癌においても,新たに腹腔動脈合併尾側膵切除術が開発され,切除成績の向上が期待されました。しかし,たとえ肉眼的根治切除が得られても,肝転移や局所・腹膜の再発は制御が困難であり,膵頭部癌と同様,手術単独での治療効果が限定的であることが明らかとなりました。
そのような中,膵周囲の主要脈管への浸潤程度により診断する「切除可能性分類」が提唱され,動脈に進展した膵癌は“切除可能境界”膵癌あるいは“切除不能”膵癌として分類されました。この分類とともに動脈浸潤を呈する症例には最初に“切除ありき”ではないという考えが,いっそう浸透したと思います。
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