1 極論,非専門医はめまい処方をなるべくしない
・理由1 非専門医にとって,めまい診療の目標は診断であり,処方ではない
・理由2 そもそもストロングエビデンスのある,めまい処方がない
・理由3 めまい処方をすると,診療をした気分になり,診断をつけなくなる
2 非専門医版めまい診断
・疾患1 良性発作性頭位めまい症(BPPV)
・疾患2 前庭神経炎
・疾患3 中枢性めまい
・そのほかのめまい診断
3 めまい処方薬の作用機序
4 めまい診断ができたときの処方は?
・BPPV:頭位治療で軽快すれば,処方は不要
・前庭神経炎:症状が強ければ,抗ヒスタミン薬,ベンゾジアゼピン,プリンペラン®,メイロン®のいずれかを,副作用を十分考慮して処方してもよい
・中枢性めまい:脳卒中の処方(治療)。めまいが強ければ,ベンゾジアゼピン,プリンペラン®を処方してもよい
5 めまい診断ができないときの処方は?
【入院となった場合】
【帰宅する場合】
6 処方よりも説明が重要
・処方>>説明・診断になっていないか?
・診断(7割)>説明(3割)>処方〔1割未満(数%)〕が正解
めまい処方の話である。さっそく,次の症例の処方を考えてみよう。
この質問を研修医にぶつけると,「メイロン®」「アタラックス®-P」「ホリゾン®」,そして嘔吐していたら「プリンペラン®」という答えが返ってくることが多い。皆さんはいかがだろう? では,次の症例ではどうだろう。
こちらの質問だと,「胸痛の性状は?」「処方の前に心電図は?」とコメントする研修医が多い。症例Aと症例Bの違いは,「めまい」と「胸痛」という症候名だけである。しかし胸痛症例では,虚血性心疾患など緊急性疾患の診断除外が処方より重要と考えている。診断なしの処方はその場しのぎであり,根本的な問題解決にはなっていないと判断しているのだ。
めまいでも本来であれば,中枢性めまいなど緊急性疾患の診断除外は必要である。しかし,めまい症例だと処方名を即答してしまうのは,普段から診断せず処方に走っているからではないか? この2つの症例への回答を比べると,胸痛では「診断>処方」という重みづけができているのに,めまいでは「処方>診断」と考えているところに,めまい処方のピットフォール(落とし穴)が見えてくる。
今回はめまい処方を解説するが,最も重要なのはこの落とし穴に落ちないことである。そのためには,「非専門医はめまい処方を,いったんやめる」ことである。その理由は,次の3つにある。