免疫性血小板減少性紫斑病(immune thrombocytopenic purpura:ITP)は,血小板に対する自己抗体により血小板減少症をきたす自己免疫性疾患で,小児では感染症やワクチン接種を契機に発症することが多い。約8割は自然寛解するが,副腎皮質ステロイドや免疫グロブリン製剤(IVIG)などの薬物療法に抵抗性を示す症例が存在し,時に重篤な出血症状を起こす。
ITPの診断は原則として他疾患を除外することで診断がなされ,診断を確定させる特定の臨床検査はない。
点状出血斑や紫斑,時に口腔内出血,鼻出血,下血,血尿,月経過多などを認める。筋肉内出血,関節内出血,頭蓋内出血は稀である。
血液検査では血小板数低値,赤血球と白血球の数と形態はいずれも正常である。骨髄検査では巨核球数は正常ないし増加する。また,形態異常は認めない。赤芽球・顆粒球系細胞に形態異常を認めない。
診断から3カ月以内を新規診断,3~12カ月までを持続期(移行期),12カ月以上を慢性期と定義する。
小児ITPの治療の目標は血小板数を正常化することではなく,自然回復するまでの間の危険な出血を防ぐことであり,薬剤使用量は血小板数3万~5万/μL以上を維持するのに必要な最小限量にとどめる。また,血小板数に合わせた生活を強いるのではなく,スポーツへの参加などの生活スタイルやQOLを考慮して治療方針を決定する必要がある。
血小板数にかかわらず,出血リスクを有する患者に対する治療は,副腎皮質ステロイド(1~2mg/kg),あるいはIVIG(1g/kg/日)が第一選択である。
副腎皮質ステロイドあるいはIVIGの投与を行っても,血小板数が増加しない,血小板数の増加が一過性である,あるいはそれらの治療に不耐容であり,その結果,①粘膜出血などの出血症状がある場合,②重篤な出血を起こす恐れがある場合,③副腎皮質ステロイドの高用量・長期使用を必要とする場合,④ITPによる著しいQOLの低下がある場合,を難治性ITPと定義する。
難治例に対して,近年トロンボポエチン(TPO)受容体作動薬やリツキシマブの使用経験が増えてきている。TPO受容体作動薬は小児での長期投与の安全性はいまだ確立していないが,投与中の有用性および短期の安全性はともに高い薬剤である。
脾摘は慢性難治性ITPに治癒をもたらしうる治療法であるが,手術の侵襲性や脾摘後重症感染症などへの懸念から小児ITPへの脾摘の実施は減少している。ただし,いずれの薬物療法も無効でQOLに影響を与える出血症状を反復する,あるいは有害事象のため薬物治療が継続できない慢性難治性ITPには,脾摘の適応を考慮すべきである。
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