社交不安症は,日常的な人との関わり(社交)に強い不安を感じ,生活に支障をきたす,不安に関する精神疾患(不安症群)のひとつである。対人恐怖症の概念から始まり,従前の社会恐怖のことで,世界精神保健日本調査セカンド1)での生涯有病率は1.8%であった。発症は思春期・青年期に多く,未受診率が約7割と想定され,不登校やひきこもりにつながり,苦悩が続くため,早期発見・早期介入が求められる。
①人前で話をするなどの注目される状況,②人の集まりに入っていく状況,③人前で恥ずかしいことをして他人から否定的に評価される状況等の怖さが度を超えていて,生活に支障が出たり,耐えるのにひどいつらさを感じたりすることが6カ月以上続く,などを問診する。
人と話すこと自体に強い不安がある社交不安症の患者との面談は,治療同盟を確立するために,まずは勇気を出して受診してくれたことをねぎらい,治療を求めることが素晴らしいことであると言葉にすることから始まる。社交場面での傷つき体験を含む病歴聴取を行い,自己記入式質問紙で簡易な心理検査〔LSAS-J(リーボヴィッツ社交不安尺度)2),保険適用〕を行って重症度を判定したり,どのような社交場面で強い不安を感じ避けてしまっているのかを把握したりする。人前での不安は誰にでもあることだから等の本人の不安を過小評価する否定的な発言は厳に慎まれたい。
社交不安症の治療としては,精神療法としての認知行動療法と薬物療法がある。認知行動療法が薬物療法より優れているという研究もあり,そのようなエビデンスを患者と共有し,一緒に治療法を決定する。自施設に認知行動療法に熟練した医師等がいない場合は,専門機関への照会を検討する。
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