変形性股関節症は,軟骨の変性摩耗と骨増殖性変化(骨棘や軟骨下骨硬化)と関節包肥厚を特徴とする疾患で,過剰な機械的ストレスに起因する。日本では,股関節形成不全由来の二次性股関節症が多いが,平均寿命の伸びによる超高齢社会で,関節形態に異常のない一次性股関節症が増えている。
股関節から大腿部にかけての疼痛,可動域制限(拘縮),跛行がみられる。
関節リウマチや他の関節炎では赤血球沈降速度やCRPが上昇するが,股関節症では上昇しない。
股関節裂隙の狭小化,大腿骨頭あるいは寛骨臼の骨棘形成,軟骨下骨硬化像や囊腫像がみられる。
関節症の重症度(病期)は,関節裂隙の軽度狭小化や骨棘形成のみ認める初期,明らかな関節裂隙狭小化と囊腫形成を認める進行期,関節裂隙の消失する末期にわけられる。また,股関節形成不全の診断には,CE角が最も信頼性の高い指標で,20°未満が明らかな形成不全,20°以上25°未満が境界領域とされている。
症状の緩和と軟骨変性摩耗の進行防止が治療の目標となる。初期には保存治療が行われるが,患者教育,運動療法,物理療法,歩行補助具・装具,薬物療法,関節内注射などが症状緩和に,一時的に有効である。しかし,いずれも長期的に股関節症の進行を防止できるエビデンスに乏しい。青壮年期までの初期股関節症で,明らかな寛骨臼形成不全がある場合は,保存的治療により股関節症が進行してしまわないように,寛骨臼回転骨切り術など有効な関節温存手術を早めに勧めるべきである。
一方,進行期から末期の股関節症では,骨切り術などの関節温存手術の成績は初期股関節症よりも劣り,中年期の初期股関節症の場合,骨切り術の成績は青壮年期より劣る。青壮年期の進行期以上や中年期の初期股関節症の場合,骨切り術を考慮するのか,より高いQOLを短期間で獲得するために人工股関節全置換術をすべきかの選択となる。
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