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[感染防止対策特集]Withコロナに求められるクリニックの感染防止対策(水野泰孝)

登録日: 2021-12-03

最終更新日: 2021-12-03

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グローバルヘルスケアクリニック 院長 水野泰孝

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)が国内で確認されてからまもなく2年が経過しようとしている。2020年2月に指定感染症に位置付けられたこともあり、当初は感染症指定医療機関において感染管理に熟知したスタッフのもとでの診療が中心で、クリニックなどの施設で診療を行うことは想定されていなかった。特に都心のクリニックの多くは限られたスペースで多くの患者を診療しなければならず、たとえ隔離スペースを設けることができたとしても、院内での感染拡大やスタッフへの感染リスクを考えれば運用面や経営面に様々な影響が及ぶ可能性があることから、疑い患者を受け入れることが困難であったことはやむをえない。

しかしCOVID-19の病原体の特徴や感染形態が認知され、ワクチン接種による免疫の獲得、新たな治療薬の開発が進んでいく「Withコロナ時代」の新たな医療提供体制構築のためには、クリニックにおいても様々な形でのCOVID-19対応と適切な感染防止対策が求められることになる。

本稿ではこれまでの当院の取り組み、設備投資などを紹介したい。

いかなる感染症にも初期対応できる施設を目指した

当院は東京都千代田区麹町にある無床診療所であり、スタッフは医師1名、看護師2名、医療事務1名である。集合住宅1階のテナント(28.94坪)にあり、近隣にはコインパーキングもあることから院外で待機するスペースは確保できる環境である。前職の新病院設計の際に感染管理部門責任者として関わった知識を活かし、内装の段階から「いかなる感染症に対しても初期対応ができる施設」となるような設計(CG画像参照)にこだわった。当然ながら当時はCOVID-19の診療を目的とするものではなかったが、結果的には発生直後から効率的に運用できている。

空間的・時間的ゾーニングを実施

ビルの構造上、入口が1か所しかないので発熱患者専用の完全な動線を設けることはできないが、入ってすぐ横に隔離室(写真)を設けており、直接受付や待合スペースに立ち入らないような動線は確保できている(空間的ゾーニング)。原則的に時間予約制とし、発熱患者の診療にあたる時間帯は他の患者の診療は行わないようにし、直接来院される患者に対しては事情を説明して指定した時間に再来していただくようにしている(時間的ゾーニング)。

多くの受診希望者はホームページを確認したうえで電話連絡をしていただけるので、来院までにホームページからウェブ問診を入力するように依頼する。これにより、事前に問診が確認でき、また、時間を指定することで、どのような患者が何時に受診するかがある程度予想できる。到着した段階で院内に入る前に再度連絡をしていただき、こちらから院内に案内している。

隔離室は待合室・診察室両方から入室可能

隔離室は待合室側と診察室側の扉があり、隔離室内で待機している患者に対し、診察室側から一定の距離を保ちながら追加の問診を行う。検体採取も隔離室内で行うが、患者正面からではなく横から採取をすることで直接飛沫を浴びる可能性を低くすることができるが、これまで飛沫が発生した患者には遭遇していない。検体採取後はそのまま待機していただき、会計は待合室側の扉から私自身が行うことで他のスタッフが疑い患者と至近距離で接触する機会を避けている。

この方法でこれまで100人以上のCOVID-19確定患者の診察とその数十倍のCOVID関連検査を実施してきたが、感染対策上の問題点は発生していない。

感染防止対策をした上で以前の診療体制に戻していくことが求められる

感染症発生の3要素として「感染源」「感染経路」「感受性宿主」が挙げられるが、このうちのどれかを断つことによって感染症の拡大を最小限に抑えることが可能となる。しかしCOVID-19で最も厄介な点として無症状でも感染することがあることから「感染源」を特定することが困難であり、「感受性」を低くするためのワクチンがなかった時期には「感染経路」を遮断するための対策、すなわち飛沫感染対策および接触感染対策をひたすら行うしか手段がなかった。

現段階ではワクチン接種が急速に進み、構築されつつある集団免疫の獲得による「宿主感受性の低下」や「感染源」に対する治療・予防薬の開発などにより感染が急速に拡大する可能性は低くなりつつある。特に経口治療薬が外来で投与可能となれば、特殊な感染症から一般的な市中感染症としての位置づけにシフトしていくとともに、クリニックでもCOVID-19発生以前と変わりない診療体制に戻していくことが求められるだろう。

医療機関における感染防止対策は「単にやっている感」ではなく、前述した「感染症発生の要素を断つ」ことを意識しながら効率的に行うことが望ましい。そのためにも施設管理者である院長はCOVID-19に対する最新知識の習得および正しい感染対策のアップデートに努めなければならない。

(2021年10月末)


日本医事新報5092号別冊付録「感染防止対策特集」より

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