副鼻腔真菌症の病態には,感染性〔急性浸潤,慢性浸潤,慢性非浸潤(寄生型)〕とアレルギー性〔アレルギー性副鼻腔真菌症(allergic fungal rhinosinusitis:AFRS)〕がある1)2)。3大真菌種はアスペルギルス属(最多),カンジダ属,ムーコル属である。
浸潤性を示唆するサイン〔免疫抑制状態,激しい疼痛(顔面痛・頭痛),急速に進行する脳神経障害(Ⅱ,Ⅲ,Ⅴ,Ⅵ),意識障害,CTで骨破壊像と周囲への浸潤〕を見逃さない。
確定診断には病理組織検査が必須で,副鼻腔粘膜内浸潤の有無を確認する。真菌培養の検出率は低い。補助診断には画像検査と血清検査がある。真菌塊はCTで高吸収域,MRIのT2で無信号を呈する。血中β‒D‒グルカンの上昇は,浸潤性のアスペルギルス症やカンジダ症で呈するが,ムーコル症では呈さない。
AFRSは,①Ⅰ型アレルギー(真菌特異的IgE高値),②鼻茸,③特徴的画像所見(CTで高吸収域,MRIでT1WI等信号,T2WI低信号域),④好酸球性ムチン,⑤組織内浸潤がない真菌の存在,の5項目をすべて認めた場合に診断する2)。
真菌症は片側性病変が多いため,鼻副鼻腔腫瘍や歯性上顎洞炎と鑑別する。
いずれの病態も診断兼治療を目的に,内視鏡下副鼻腔手術(endoscopic sinus surgery:ESS)により病変を除去する。浸潤性に対する鼻外拡大手術の適否は,合併症・後遺症を考慮して決定する。
真菌症に対してマクロライド系抗菌薬は有効ではない。
非浸潤性(寄生型)はESSによる真菌塊の完全な摘出により治癒するため,抗真菌薬は投与しない1)。
浸潤性は早急にESSと抗真菌薬の全身投与を行う。ガイドライン1)ではアゾール系ボリコナゾール(VRCZ)が第一選択である。キャンディン系ミカファンギンナトリウム(MCFG)は,スペクトラムは広くないが安全性は高い。ムーコル症にはポリエン系アムホテリシンBリポソーム製剤(L-AMB)が第一選択となる。抗真菌薬は症状,画像所見,β‒D‒グルカン陰転化などを参考に数カ月間投与する。
AFRSは2型炎症を抑制する副腎皮質ステロイドが有効で2),抗真菌薬は有効ではない。
ステロイドは感染性に禁忌である一方,AFRSに有効で,治療薬がまったく異なるため,病態診断は非常に重要である。抗真菌薬は浸潤性のみに適応で,併用薬と副反応に注意する。
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