発症の原因である髄液吸収障害の原因が不明であるため,現時点では脳室拡大の原因となる脳室内髄液貯留を解消させるための髄液シャント術が,唯一有効な治療法である。手術術式としては,脳室腹腔シャント術,腰椎腹腔シャント術,脳室心房シャント術などがある。術式の選択や手技については,対象が高齢者であるため,術後合併症を可能な限り避ける努力が必要である。わが国では腰椎腹腔シャント術を選択する施設が多いが,術後のシャントチューブの逸脱や閉塞は,脳室腹腔シャント術と比べ多いとの報告もある。当院では,圧可変式バルブを用いた側脳室後角穿刺による脳室腹腔シャント術を第一選択としている。脳室の誤穿刺を避けるためにCT画像をwork stationで再構成し,穿刺位置と穿刺方向を決定している。ニューロナビゲーションも有用な手法である。
術後合併症として,血腫,感染,シャント機能不全,髄液過剰排除に伴う頭痛や硬膜下血腫などがある。髄液の過剰排除を防止するため,圧可変式かつアンチサイフォン機能を有するシャントシステムの使用が推奨されている。様々なタイプのシャントシステムが存在するが,まずは使い慣れたシステムを用いた手術手技を習熟することが,合併症の低減につながると考えている。
【参考資料】
▶ 「特発性正常圧水頭症の診療ガイドライン作成に関する研究」班, 他, 監:特発性正常圧水頭症診療ガイドライン. 第3版. メディカルレビュー社, 2020.
山本一夫(洛和会音羽病院脳神経外科部長)