川崎病(Kawasaki disease:KD)は,1967年に川崎富作によって初めて報告された,乳幼児に好発する原因不明の全身性血管炎である。最も重篤な合併症は冠動脈瘤(coronary artery aneurysm:CAA)であり,最新の全国調査によると発症1カ月以降の心後遺症は,巨大瘤(0.1%)や拡大(1.5%)を含むCAAが計2.2%であった。本稿では,CAAの合併を最大限予防するためのKDの急性期治療に焦点を当てる。なお,CAAを合併した場合の治療方針については,別稿(「川崎病(冠動脈病変)」の稿参照)で取り扱う。
KDの主要症状6項目のうち5項目以上を呈する場合や,4項目でも心エコーでCAAを呈する場合はKDと診断する。また,4主要症状でCAAがないか3主要症状以下の場合は,他の疾患を除外した上で不全型KDと診断する。不全型KDでもCAAの頻度はKDとほぼ同程度である点は留意すべきである。したがって,不全型KDでも典型例と同様の標準治療を行うことが推奨されている。
冠動脈病理の検討によると1),まず第6~8病日に単球/マクロファージを主体とした炎症細胞が内膜と外膜に浸潤する。第8~10病日には冠動脈全層へと炎症が拡大し汎血管炎を呈する。さらに第10~12病日には動脈壁の破綻が生じ,風船が膨らむような遠心性の拡張を認める。よって汎血管炎が生ずる前の第7病日までに初期治療を開始し,冠動脈拡張の始まる前の第9病日までに治療が奏効し炎症を鎮静化させることがポイントである。また,CAAが合併する症例の多くは免疫グロブリン静注(IVIG)不応性を示すことから,IVIG不応性かどうかを早期に判断し,疑われる際には躊躇せず追加治療に踏み切ることが重要である。
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