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A群溶連菌感染症[私の治療]

No.5106 (2022年03月05日発行) P.39

石和田稔彦 (千葉大学真菌医学研究センター感染症制御分野教授)

登録日: 2022-03-05

最終更新日: 2022-03-01

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  • A群溶連菌(Streptococcus pyogenes)による感染症である。A群溶連菌は,小児から成人まで幅広い年齢層の咽頭炎,扁桃炎の主要な原因菌である。また,壊死性筋膜炎や劇症型溶連菌感染症などの重症感染症を惹起する。

    ▶診断のポイント

    臨床症状と周囲の流行状況からA群溶連菌感染症を疑った場合には,咽頭細菌培養,あるいは咽頭溶連菌迅速抗原検査を実施し,診断を確定する。
    A

    群溶連菌による咽頭炎,扁桃炎は発熱,咽頭痛,頭痛などを認めることが多い。また,嘔気・嘔吐,腹痛などの腹部症状をしばしば伴う。診察上,咽頭は著明に発赤する。扁桃は,充血,腫大し,白苔,滲出物を伴うことも多い。頸部や下顎部に有痛性のリンパ節腫脹が認められる。また,特徴的な皮疹を伴うことがある。

    A群溶連菌は飛沫感染するため,所属する集団内の流行や家庭内での伝播が認められる。したがって,問診の際に,周囲での流行の有無を確認することも診断の参考となる。

    ▶私の治療方針・処方の組み立て方

    A群溶連菌による咽頭炎,扁桃炎に対しては,臨床効果と細菌学的効果の高いペニシリン系抗菌薬投与を第一選択とする。投与期間は,小児では10日間,成人では7~10日間を基準とする1)2)

    セフェム系抗菌薬の短期投与も,ペニシリン系抗菌薬の標準的治療と同等の臨床効果があり,第二選択とする。ただし,ピボキシル基を有する抗菌薬を投与する場合には,カルニチン欠乏をきたす恐れがあるため,特に乳幼児では短期間に反復投与を行わないように注意する。

    ペニシリンアレルギーに対しては,マクロライド系抗菌薬の投与を考慮するが,国内では,A群溶連菌のマクロライド耐性率が高いことに留意する必要がある。

    治療失敗例に対しては,咽頭培養検査を行い,感受性試験の結果や他の病原細菌の有無を参考に抗菌薬選択を行う。

    壊死性筋膜炎などの重症A群溶連菌感染症の致命率は高く,治療には早期の壊死組織の外科的切除と抗菌薬投与が必須である。抗菌薬療法に関して,ペニシリン系抗菌薬の大量投与が基本となる。クリンダマイシンは,A群溶連菌が産生する毒素の抑制効果などが期待される抗菌薬であり,ペニシリン系抗菌薬との併用で予後改善効果が認められている。

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