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外傷性頸部症候群[私の治療]

No.5107 (2022年03月12日発行) P.43

遠藤健司 (東京医科大学整形外科准教授)

登録日: 2022-03-14

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  • むち打ち損傷では,軽微な外傷にもかかわらず長引く疼痛性障害に悩まされることがある。起立性頭痛などがない場合は,可及的に安静,不動化を排除して早期に社会復帰を促すことで,慢性疼痛に移行することを避けるべきである。

    ▶診断のポイント

    外傷性頸部症候群は,外傷の中でも軽症の部類に入るが,痛みやしびれなどの症状がなかなか改善されず,難治化・慢性化するケースが存在することが知られている。それを予防するためには,「早期の適切な治療」だけでなく,「生活指導」はとても重要である。痛みの慢性化には「ストレス」と「不動化」が関係している。ストレスとは精神と体にかかった負荷のことを,一方の不動化とは長時間にわたって同じ姿勢を続けることを指す。交通事故にあえばそれ自体がストレスになるが,画像所見で異常がない場合は不安を取り除き不動化を避けるために,なるべく早期に日常生活に復帰することが重要である。

    ▶私の治療方針・処方の組み立て方

    症状より病態を整理する。①頸椎捻挫型:首痛や張り,肩こりなど,②神経根型:首と腕,肩甲骨の痛みとしびれ。しびれは首を動かすと強まり,手や指の感覚が鈍くなる,③脊髄症型:症状は四肢に及び,反射が亢進する,④バレー・リュー型:首痛,頭痛,めまい,吐き気,不安感,不眠など自律神経症状が主である,⑤胸郭出口症候群型:首痛,片方の腕にしびれと冷感,⑥脳脊髄液漏出症型:起立性頭痛(横になると楽になる),微熱,めまい,吐き気,集中力低下,記憶力障害など。

    【検査の組み立て方】

    事故状況と,疼痛部位,程度の記載は重要である。起立性頭痛,めまいなど自律神経症状の有無は問診する必要がある。疼痛が遷延化,複数診療機関での加療となった場合に,外傷との因果関係を証明するための重要な証拠となる。頸部に運動時痛,四肢神経症状がある場合は,脊椎靱帯骨化症など頸椎基礎疾患の有無をみるために頸椎X線像(正面,側面,側面前後屈)を撮影する。経時的に症状の改善を認めない場合は頸椎MRI,頭痛・起立性頭痛が存在する場合は脳脊髄液漏出症を疑い,脳の造影MRIが必要となる。

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