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クリミア・コンゴ出血熱[私の治療]

No.5108 (2022年03月19日発行) P.42

川名明彦 (防衛医科大学校内科学講座(感染症・呼吸器)教授)

登録日: 2022-03-20

最終更新日: 2022-03-15

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  • 本疾患は,クリミア・コンゴ出血熱ウイルス(ブニヤウイルス科)による熱性疾患である。1944年にクリミアで,また1956年にコンゴで,それぞれ別の患者から分離されたウイルスが後に同一であることがわかり,クリミア・コンゴ出血熱ウイルスと命名された。マダニによって媒介される。ウシ,ヤギ,ヒツジなどの家畜や,多くの野生動物(齧歯類,ウサギ,鳥類)が自然宿主である。ヒトへの感染経路はマダニによる吸血,および感染した家畜や動物の血液・臓器との接触である。ヒト-ヒト感染も,血液や体液への接触,飛沫,針刺しなどにより起こる。アフリカ,中東,中央アジア,中国および南東ヨーロッパ(ロシアを含む)で流行しており,毎年50~200人程度の報告がある。

    ▶診断のポイント

    潜伏期間は2~9日。初期症状は特異的ではない。時に突発的に発生する。発熱,頭痛,悪寒,筋肉痛,関節痛,腹痛,嘔吐がみられ,続いて咽頭痛,結膜炎,黄疸,羞明および種々の知覚異常が現れる。点状出血が一般的にみられ,進行すると紫斑も生ずる。重症化するとさらに全身出血,血管虚脱をきたし,死亡例では消化管出血が著明である。致死率は国によって異なるが,15~40%である。肝・腎不全も出現することがある。患者の血液と体液が感染源となる。

    上記の特徴的な臨床症状からクリミア・コンゴ出血熱を疑った場合は,確定診断のための検査を行う。具体的には,血液,咽頭拭い液,尿を検体として,①分離・同定による病原体の検出,②ELISA法による病原体の抗原の検出,③PCR法による病原体の遺伝子の検出を行う方法と,④血清中から蛍光抗体法によるIgM抗体もしくはIgG抗体を検出,または補体結合反応による抗体を検出する方法がある(感染症法による)。

    過去2週間以内に本疾患が報告されている地方への渡航歴があり,ダニ咬傷や動物との接触歴がある症例で,上記の症状がある場合は本症も疑う。鑑別すべき疾患としては,その他のウイルス性出血熱,マラリア,リケッチア症,Q熱,ブルセラ症,レプトスピラ症,回帰熱,ウイルス性肝炎,髄膜炎菌性髄膜炎などがある。

    感染対策は,流行地域ではダニへの曝露を避け,動物や動物の体液・臓器への接触を避けることである。医療現場では,患者をケアする場合は接触予防策,飛沫予防策を実施し,エアロゾルが発生する手技を行う場合は空気予防策も取り入れる。

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