野山に生息する病原リケッチア(Orientia tsutsugamushi)を保有した小型のダニであるツツガムシの幼虫やマダニ類がヒトを刺咬することにより感染が成立する。日本では年間400~500例の感染報告があり,ツツガムシの活動時期に合わせ5~6月と11~12月に発生のピークがある。
予防接種はなく,ダニの吸着を防ぐことが重要なため,流行地域で野山や河川敷に入る際には,長袖・長ズボンで肌の露出を避け,忌避剤(DEET等)を適宜使用する。作業後は早めに着替え,入浴で吸着したダニは洗い流すことが推奨される。通常ヒト-ヒト感染はみられないため,患者の診療においては標準予防策で対応する。
なお,つつが虫病は感染症法で4類感染症に定められており,確定患者,無症状病原体保有者,死亡者を診断した医師は,直ちに最寄りの保健所へ届け出ることが義務づけられている。
発熱,刺し口,皮疹が主要三徴候と呼ばれ,それぞれ約90%の患者で認められる。刺し口は径10mm前後で黒色痂皮の周りに発赤を伴うものが典型的で,股間,腋窩,腰部など発見されにくい部位に多く,頭髪内,被覆部含めて全身の皮膚観察を行うことが重要である。
確定診断は,リケッチア間接蛍光抗体法による抗体の検出が標準的な診断法で,Kato,Karp,Gilliamの標準3血清型の抗原を用いる場合は保険適用となっている。その他一部の地方衛生研究所では,地域で流行している抗原を用いる検査も行っている。急性期血清でIgM抗体が有意に上昇している場合か,ペア血清で抗体価が4倍以上上昇した場合を陽性とする。また,治療前の痂皮のPCRによる病原体遺伝子の検出も確定診断方法となる。
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