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誤診回避の方略[直感で始める診断推論(10)(最終回)]

No.5113 (2022年04月23日発行) P.34

生坂政臣 (千葉大学医学部附属病院総合診療科教授)

登録日: 2022-04-25

最終更新日: 2022-04-21

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Ⅰ プライマリ・ケアで診断にこだわる意義

究極の誤診回避法は診断しないことであるし,実際,わが国の外来診療では患者に積極的に診断名を告げるよりも,「様子をみましょう」という言い回しが定番になっている。これは多くの外来患者が病初期や軽症例であり,時間軸の中で病態を把握するしかないことや,診断にこだわらずに全人的に患者を診るべきという考えの表れかもしれない。しかしながら患者を丸ごと診る診療が大雑把な診療であってはならない。木を見て森を見ずでは困るが,全体を意識しながら細部にもプロフェッショナルとしてこだわる必要がある。

症例 30歳男性:咽頭痛,発熱  
2日前の夕方より左咽頭痛を自覚し,翌日に39℃の発熱が出現したため来院。嚥下痛を伴うという。市販の解熱鎮痛薬を服用している。受診時のバイタルサインは体温36.6℃,脈拍116/分,血圧134/81mmHg,呼吸数18/分で,視診上,口腔内に異常を認めない。左前頸部に圧痛を認める。頸部CTは正常範囲であったため,抗菌薬で様子をみる方針とし,患者を帰宅させた。

さて,皆さんならどうするだろうか?

嚥下痛を伴う咽頭痛は普通感冒ではないので,咽頭に所見がなければ周辺組織の炎症を考えなければならない。そうすると亜急性甲状腺炎,石灰沈着性頸長筋腱炎,咽後膿瘍,レミエール症候群,急性喉頭蓋炎などの疾患が想起される。頸部CTで異常を認めなかったとはいえ,緊急性の高い疾患が鑑別に含まれている以上,それらの疾患が否定されるまで患者を帰途につかせるべきではない。翌日,この患者は予定通り再診し,喉頭ファイバースコピーにて急性喉頭蓋炎の診断のもと緊急入院となった(図1)。


確かに急性喉頭蓋炎の特徴である時間単位での悪化,流涎,hot potato voice(こもった声),sniffing position(臭いを嗅ぐ姿勢)などは初診時にみられず,前頸部痛も舌骨の左側に限局する非典型例ではあったものの,急性喉頭蓋炎の可能性を認識していない(言語化していない,診療録に記載していない)とすれば問題である。外来担当医は熟練医であり,重症感がなかったことを理由にいったん帰宅させているが,急性喉頭蓋炎は突然の窒息死をきたしうる重篤かつ緊急性の高い疾患であり,初学者には決して勧められない対応である。







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