厚生労働省は4月19日、武田薬品工業が申請していた組換えスパイクタンパクを抗原とする新型コロナウイルス感染症ワクチン「ヌバキソビッド筋注」(一般名:組換えコロナウイルス(SARS-CoV-2)ワクチン)を薬事承認した。18歳以上を対象に初回接種(初回免疫)と追加接種(追加免疫)で使用可能となる。ファイザーやモデルナのmRNAワクチン、アストラゼネカのウイルスベクターワクチンと製造方法が異なるいわゆる組換えタンパクワクチンで、多くの医療用医薬品やワクチンと同様に冷蔵保存(2~8℃)が可能なため、通常のサプライチェーンを利用して輸送・保管できるというメリットがある。
「ヌバキソビッド」は、米ノババックス社から製造技術のライセンス供与を受けて武田薬品が国内で生産を行う。武田薬品は現在、光工場(山口県)でワクチンの製造を進めており、「概ね1年間で1億5000万回接種分を供給する」との日本政府との契約に基づき、準備が整い次第、順次出荷を開始する。
今回の承認は、海外臨床第3相試験のデータや国内臨床第1/2相試験の中間結果のデータに基づくもの。初回接種(初回免疫)については、米国・メキシコで実施された3万人規模の第3相試験で90.4%、英国で実施された1.5万人規模の第3相試験で89.7%の発症予防効果が得られており、日本人における血清中和抗体価は海外でのデータと大きく異ならないことが国内治験で確認されている。
後藤茂之厚労相は4月19日の記者会見で、「ヌバキソビッド」について「mRNAワクチンに対してアレルギーがある方への接種を念頭に、5月下旬から6月上旬にかけて合計約10万回分のワクチンを(全国の自治体に)配送する」との方針を説明。「1億5000万回分のさらなる活用方法については、審議会での今後の議論の内容も踏まえつつしっかりと検討していきたい」と述べた。