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皮脂欠乏性湿疹・貨幣状湿疹[私の治療]

No.5117 (2022年05月21日発行) P.52

天野博雄 (岩手医科大学医学部皮膚科学講座教授)

登録日: 2022-05-19

最終更新日: 2022-05-17

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  • Ⅰ.皮脂欠乏性湿疹

    加齢と生活環境・習慣に伴う皮脂欠乏が基本にある。皮脂欠乏により皮膚のバリア機能が低下し,外界からの刺激を受けやすくなることでかゆみが生じる。かゆみを伴うことで搔破を繰り返し,二次的に地割れ様の湿疹が生じる。

    ▶診断のポイント

    中高齢者の下腿伸側に好発する。上肢外側,腰背部,腹部にも生じやすい。皮膚は粗糙化し,粃糠様の鱗屑・落屑に加えて,網目状の紅斑,地割れ様の亀裂,点状痂疲,丘疹,搔破痕がみられる。

    ▶私の治療方針・処方の組み立て方

    かゆみが強い場合や紅斑などの炎症所見がみられる場合には,ステロイド外用薬を適宜使用する。湿疹の重症度に応じて適切なランクのステロイド外用薬を用いる。瘙痒が強い場合は,搔破抑制のために抗ヒスタミン内服薬を併用する。ステロイド外用によりかゆみや炎症所見が軽快した後は,保湿剤を十分に外用する。特に,入浴後に保湿剤を塗布することで高い効果が得られる。再燃しやすい疾患であるため,治療継続の必要性を患者に十分説明する。

    ▶治療の実際

    一手目 :ロコイド軟膏(ヒドロコルチゾン酪酸エステル)1日1~2回(塗布),またはメサデルム軟膏(デキサメタゾンプロピオン酸エステル)1日1~2回(塗布)

    二手目 :〈処方変更〉アンテベート軟膏(ベタメタゾン酪酸エステルプロピオン酸エステル)1日1~2回(塗布)

    三手目 :〈一手目または二手目に追加〉ビラノア20mg錠(ビラスチン)1回1錠1日1回(就寝前または空腹時),またはルパフィン10mg錠(ルパタジンフマル酸塩)1回1錠1日1回(食後)

    ▶偶発症・合併症への対応

    皮脂欠乏性湿疹では,基礎疾患として皮脂欠乏症を有することがほとんどであるため,これに対する治療やスキンケア,すなわち保湿外用剤の塗布が重要である。保湿剤として,ワセリン,ヘパリン類似物質,尿素製剤などが発売されている。ヘパリン類似物質はクリーム・軟膏,乳液・ローション,泡状タイプなど様々な剤形があるので塗りやすいものを選択する。尿素製剤は刺激性を伴うことがあり,注意が必要である。外用時に皮膚に擦り込まず,やさしく愛護的に塗るように指導する。

    さらに,過度の洗浄を避けるなど乾燥に対する生活指導が非常に重要である。生活習慣を見直し,皮膚を乾燥させないように指導する。すなわち,入浴時にはナイロンタオルなどの使用は行わず過度の擦過は避ける,洗浄剤の過度な使用・頻回の入浴・高温入浴は避ける,こたつやエアコンなど皮膚を乾燥させる器具については適切な使用を心がける,などである。

    【皮脂欠乏症に対して】

    一手目 :ヒルドイドソフト軟膏(ヘパリン類似物質)1日1~数回(塗布),またはヒルドイドローション(ヘパリン類似物質)1日1~数回(塗布)

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