株式会社日本医事新報社 株式会社日本医事新報社

CLOSE

重症急性呼吸器症候群(SARS)[私の治療]

No.5124 (2022年07月09日発行) P.51

西條政幸 (札幌市保健福祉局・保健所医療政策担当部長,前国立感染症研究所ウイルス第一部長)

登録日: 2022-07-08

最終更新日: 2022-07-05

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
    • 1
    • 2
  • next

  • 2002年の暮れに,中国南部広東を源として重症呼吸器感染症が流行し,2003年2月から3月にかけて香港,ベトナム(ハノイ市),シンガポール,カナダ(トロント市)で重症肺炎の院内感染が流行した。世界保健機関(World Health Organization:WHO)は,この病気を重症急性呼吸器感染症候群(severe acute respiratory syndrome:SARS)と命名し,SARSが新規コロナウイルス(SARS-CoV-1)による新規感染症であることが明らかにされた1)。SARSの流行は2003年6月に一度収束し,約半年の流行期間に中国本土を中心に約8000人の患者が発生して,約10%の患者が死亡した。

    SARS-CoV-1の宿主は中国に生息するキクガシラコウモリであることが明らかにされている。SARSは動物(コウモリ)を宿主とするSARS-CoV-1による感染症,つまり動物由来ウイルス感染症であり,その致命率はとても高い。特異的な治療法やワクチンはない。SARSは日本の感染症法では2類感染症に分類されている。

    ▶診断のポイント

    2~7日(最大10日間)の潜伏期間の後に,発熱,咳嗽,全身倦怠感,関節痛,筋肉痛等の急性呼吸器感染症症状を呈する。発症後数日で呼吸器症状が増強し,呼吸困難,酸素飽和度の低下が出現し,画像診断(胸部CTや胸部X線写真)で重症肺炎像が認められる。SARS流行が確認されている,その流行地から帰国した重症呼吸器症状を呈する患者,および,その患者との接触者が肺炎等の症状を呈した場合に,SARSを疑う。SARSを疑う患者を診た場合には,最寄りの保健所に相談する。

    診断には,SARS-CoV-1の遺伝子を検出するためのRT-PCR検査,急性期と回復期におけるSARS-CoV-1に対する抗体価の有意な上昇を確認する必要がある。検査は地方衛生研究所または国立感染症研究所で実施される。SARSが疑われる患者は高度医療機関に紹介,搬送する。

    残り606文字あります

    会員登録頂くことで利用範囲が広がります。 » 会員登録する

    • 1
    • 2
  • next
  • 関連記事・論文

    もっと見る

    関連書籍

    もっと見る

    関連求人情報

    公立小浜温泉病院

    勤務形態: 常勤
    募集科目: 消化器内科 2名、呼吸器内科・循環器内科・腎臓内科(泌尿器科)・消化器外科 各1名
    勤務地: 長崎県雲仙市

    公立小浜温泉病院は、国より移譲を受けて、雲仙市と南島原市で組織する雲仙・南島原保健組合(一部事務組合)が開設する公設民営病院です。
    現在、指定管理者制度により医療法人社団 苑田会様へ病院の管理運営を行っていただいております。
    2020年3月に新築移転し、2021年4月に病院名を公立新小浜病院から「公立小浜温泉病院」に変更しました。
    6階建で波穏やかな橘湾の眺望を望むデイルームを配置し、夕日が橘湾に沈む様子はすばらしいロケーションとなっております。

    当病院は島原半島の二次救急医療中核病院として地域医療を支える充実した病院を目指し、BCR等手術室の整備を行いました。医療から介護までの医療設備等環境は整いました。
    2022年4月1日より脳神経外科及び一般外科医の先生に常勤医師として勤務していただくことになりました。消化器内科医、呼吸器内科医、循環器内科医及び外科部門で消化器外科医、整形外科医の先生に常勤医師として勤務していただき地域に信頼される病院を目指し歩んでいただける先生をお待ちしております。
    又、地域から強い要望がありました透析業務を2020年4月から開始いたしました。透析数25床の能力を有しています。15床から開始いたしましたが、近隣から増床の要望がありお応えしたいと考えますが、そのためには腎臓内科(泌尿器科)医の先生の勤務が必要不可欠です。お待ちいたしております。

    ●人口(島原半島二次医療圏の雲仙市、南島原市、島原市):126,764人(令和2年国勢調査)
    今後はさらに、少子高齢化に対応した訪問看護、訪問介護、訪問診療体制が求められています。又、地域の特色を生かした温泉療法(古くから湯治場として有名で、泉質は塩泉で温泉熱量は日本一)を取り入れてリハビリ療法を充実させた病院を構築していきたいと考えています。

    もっと見る

    関連物件情報

    もっと見る

    page top