厚生労働省によると新型コロナウイルス感染症の全国の自宅療養者は7月6日時点で15万9780人となった。前週からは5万3514人増で多くの地域で新規感染者の増加傾向が続いている。感染防止策の徹底と医療提供体制の確保に向けた医療機関への補助に関する事務連絡を厚労省が発出するなど“第7波”到来に備えた態勢の整備が急ピッチで進んでいる。
厚労省は7月6日に「令和4年度新型コロナウイルス感染症緊急包括支援事業(医療分)の実施について」と「令和4年度新型コロナウイルス感染症緊急包括支援事業(医療分)の実施に当たっての取扱いについて」の2つの事務連絡を全国に通知した。
新型コロナウイルスワクチンの接種推進に向けた補助については、補助金額は従前のまま据え置き、2022年7月としていた期限を9月までに延長する。
ワクチン接種に関する診療所への支援は、①週100回以上の接種を4週間以上行った場合、週100回以上の接種をした週における接種回数に対して回数当たり2000円を補助、②週150回以上の接種を4週間以上行った場合、週150回以上の接種をした週における接種回数に対して回数当たり3000円を補助、③1日50回以上の接種を行った場合(①②の要件を満たさない週の属する日に限定)、1日当たり定額で10万円を交付─という接種を行った回数に応じた3段階の補助がある。令和4年度事業の対象期間はこれまで「4〜7月のそれぞれの期間中」としていたが、感染者数の増加を踏まえ、「4〜9月のそれぞれの期間中」に延長する。感染動向によっては10月以降も継続される可能性がある。診療所の一般外来は感染者数の増加により患者減に転じることが予想されるため、ワクチン接種補助は貴重な収入源となる。
病院への支援は、①1日50回以上の接種を行った場合、1日当たり定額で10万円を交付、②特別な接種体制(通常診療とは別に接種のための特別な人員体制を確保した場合、休日・休診日・時間外・平日診療時間内の別を問わない)で1日50回以上の接種を週1日以上達成する週が4週間以上ある場合、①に加え医師1人に1時間当たり7550円、看護師等1人に1時間当たり2760円を追加で交付─という補助がある。診療所同様、対象期間を9月まで延期する。
時間外・休日のワクチン接種会場への医療従事者派遣事業についても期間を延長。補助金額は病院向け支援の②と同額で、医師1人に1時間当たり7550円、医師以外の医療従事者1人に1時間当たり2760円をこれまで通り支給する。
このほか厚労省は7月5日の事務連絡で、全国の自治体や医療機関に「現下の感染状況を踏まえたオミクロン株の特性に応じた検査・保健・医療提供体制の点検・強化」を要請している。今後控える3連休や夏休みで人の移動が活発になることや感染力が高いとされるBA.4、BA.5というオミクロン株の新系統への置き換わりが進んでいる状況を踏まえ、感染の急拡大を想定した各自治体の検査・保健・医療提供体制の強化を促すことが狙いだ。
事務連絡では、①自宅療養体制の強化、②さらなる病床確保、③高齢者施設等における検査、④高齢者施設等における医療支援のさらなる強化─の4点を要請。①の自宅療養体制の強化では、「診療・検査医療機関の拡充・公表」「自宅療養者等への対応」「保健所の体制」の3項目に整理。診療・検査医療機関の拡充・公表については、診療・検査医療機関の指定を受けた約3万8000施設のうち9割の3万4000施設が自治体ホームページで公表されているとした上で、一部の公表医療機関への集中を防ぐため全指定医療機関の公表を求めた。これに加え、診療時間や検査体制、小児対応可否など情報発信の充実や工夫を求めた。また人口当たりの診療・検査医療機関数を踏まえ、指定医療機関を拡充する必要性も指摘している。
自宅療養者等への対応では、オンライン診療の体制整備などを求めた。自宅療養者の急増に備え、自宅療養者に対しオンライン診療等を行う健康観察・診療医療機関について、地域の医師会等により、地域の医療機関や訪問診療を担う医療機関との連携等を進めるなど、地域ごとの体制確認を行い、さらなる拡充・公表を進めることを求めた。
このほか宿泊療養施設については、宿泊療養施設確保計画にもとづく確保を進めるとともに、入所調整にかかる時間短縮のため、入所希望の受付を保健所ではなく直接都道府県が設置する窓口で行うなどの工夫を講じることを求めた。
日本医師会も新規感染者数が再び急増していることを踏まえ、その対応への協力を求める都道府県医師会並びに郡市区医師会長宛ての通知を、松本吉郎会長名で7月7日に発出した。
通知では、新型コロナウイルス感染症に対する現在の体制について、①最大確保床数は約4.7万床、発熱外来を担う診療・検査医療機関は約3.9万施設(4月22日時時点公表率89%)、自宅療養への健康観察・診療医療機関は約2.3万施設、②発熱外来診療体制が構築される前より、各地の医師会においては、地域外来・検査センターや宿泊療養施設等への会員医師の出務や、会員医療機関の看護職員等や医師会職員を派遣する(例えばCOVID-19JMATの枠組みでは、総延べ人数およそ11万人が参加)など、多くの医師会員が地域医療を守るために従事していることなどを説明。
その上で現体制の堅持に加え、①都道府県・市区町村行政や医療統括責任者等との緊密な連携、②感染患者の受入病床の確保と要請後の迅速な即応病床化、③後方支援体制の確立、④診療・検査医療機関、受診・相談センターや自宅療養者への健康観察・診療医療機関の拡充(公表を含む)、⑤高齢者施設等に対する協力医療機関の実質的な役割の確認と改善、支援体制の強化、⑥臨時の医療施設や入院待機施設の整備への協力、⑦罹患後症状(後遺症)への診療体制、⑧コロナ医療以外の通常医療を分担する医療提供体制の整備―などへの一層の協力を要請している。
新型コロナを巡っては、経済活動と感染対策を両立させる方針が取られており、岸田文雄首相は7月10日に投開票が行われた参院選後の会見で「新たな行動制限は考えていない」との考えを示している。オミクロン株の特性を考えると感染者数は急増していくことは確実であり、過去2年半の経験を踏まえた医療提供体制の構築と運用が求められている。