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特集:抗菌薬長期投与時の副作用対策

No.5125 (2022年07月16日発行) P.18

浦上宗治 (佐賀大学医学部附属病院感染制御部)

登録日: 2022-07-15

最終更新日: 2022-07-14

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感染制御専門薬剤師,博士(医学)。感染制御部所属の薬剤師として抗菌薬適正使用の啓発・実践に従事。専門は抗菌薬適正使用,PK-PD解析,HIV薬物療法の服薬支援。

1 抗菌薬長期投与時の副作用
・薬剤の副作用は,投与量と投与期間に比例してリスクが高くなる。
・近年,骨髄炎や人工物関連感染症など,抗菌薬の長期使用が必要な感染症は増加している。
・抗菌薬長期投与時の副作用は,臓器障害によるものと正常微生物叢(マイクロバイオータ)の破綻による副次的なイベントにわけられる。

2 腎障害
・小柄な高齢者では,クレアチニンによって推定された糸球体濾過速度(GFR)は過大評価される傾向にある。これは腎排泄型薬剤の過量投与や腎障害の見逃しにつながる。このような患者では,シスタチンCでGFRを推定する。

3 脳症・小脳失調
・抗菌薬関連脳症のうち小脳失調はメトロニダゾールに特異的な副作用であり,「メトロニダゾール脳症」として知られている。主に10日間を超えるような長期投与で問題となり,腎機能低下や高用量投与,累積投与量がリスク因子である。

4 QT延長症候群
・抗菌薬によるQT延長症候群は稀ではあるが,致死的不整脈につながる警戒すべき副作用のひとつである。リスク因子は女性,低カリウム血症や低マグネシウム血症,心疾患の既往,QT延長作用のある薬剤の併用,徐脈が報告されている。QT延長の既往がある患者は,キノロン系抗菌薬とマクロライド系抗菌薬を回避することが望ましい。

5 色素沈着
・ミノサイクリンの色素沈着は,主に2カ月程度から数年間の長期投与で発症する。“black and blue”と称される色調が特徴的で,前脛部や創傷痕,露光部が好発部位である。

6 血小板減少症
・オキサゾリジノン系抗菌薬による血小板減少症の発現タイミングは,海外の報告よりも早期であり,7日間以上を好発期間として注視する。

7 クロストリディオイデス・ディフィシル(CD)腸炎
・Bristol stool scale 5(半固形のやわらかい便)以上の下痢便が1日3回以上となれば,クロストリディオイデス・ディフィシルの抗原と毒素の迅速検査を考慮する。

8 カンジダ血症
・カンジダ血症を診断するために,血液培養が最も重要な検査である。広域抗菌薬を長期投与中に発熱や炎症所見上昇がみられた場合は,繰り返し血液培養を提出する。カンジダ血症におけるβ-D-グルカンは,補助的な指標にすぎない。

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