【譲渡・相続・贈与の際に,課税となる。また,鑑定評価が必要になることもある】
自宅の物置等から200年以上経つ由緒あるものが見つかったとしても,直近の相続等で取得したものでなければ,見つかった時点で課税関係は生じません。課税関係が生じるのは,その所有権が移転する場合です。
所有権移転の場合として考えられるのは,以下の通りです。
①その由緒あるものを譲渡する場合
②現在その由緒あるものの所有者と推定される人が亡くなり,相続人がそれを相続する場合
③その由緒あるものを贈与する場合
その由緒あるものを譲渡する①の場合には,所得税法が適用されます。
すなわち“譲渡所得”として,譲渡した年の1月1日から12月31日までの給与所得や事業所得など他の所得と合わせて,総所得金額を算出します。そして,納税地の所轄税務署長に対し,翌年2月16日から3月15日までの間に確定申告をする必要があります。
譲渡は,その資産の取得の日以後5年以内に譲渡される“短期譲渡所得”と,5年を超えて譲渡される“長期譲渡所得”にわかれます。今回のご質問では,自宅の物置から見つかったとありますので,長期譲渡所得に該当すると考えられます。
長期譲渡所得への税額の計算方法は,以下の通りです。
{長期譲渡所得の総収入金額−(譲渡資産の取得費+譲渡費用)}×2分の1
この場合の取得費ですが,購入価額がわかれば,その金額となります。しかし通常は,不明な場合が多いものです。その場合は,その収入金額の5%を取得費とすることが認められています。
なお譲渡による所得でも,その由緒あるものの価額が30万円以下であれば,“生活用動産”として,譲渡所得は非課税とされています。
次に,相続人が相続により,その由緒あるものを取得する②の場合です。
被相続人の財産にその由緒あるものを加えて,相続税の基礎控除(3000万円+600万円×法定相続人の数)を超える場合は,相続税が発生します。相続の開始があったことを知った日の翌日から10カ月以内に,被相続人が死亡したときの住所地を管轄する税務署に,相続税の申告書を提出する必要があります。
その場合における,由緒あるものの評価ですが,書画骨とう品の評価として売買実例価額,精通者意見価格等を参酌して,評価します。
その由緒あるものを贈与する③の場合も,同様に評価して贈与税を算出します。
贈与税は原則として,その由緒あるものも含めた1年間に贈与された財産の価額から基礎控除額(110万円)を控除した額に,贈与税率を乗じて算出します。
贈与税の申告は,贈与を受けた人が,贈与を受けた年の翌年2月1日から3月15日までの間に行う必要があります。
なお,その由緒あるものを相続した相続人が,国や地方公共団体または公益社団法人や公益財団法人に贈与し,その贈与が成立した場合は,相続税の課税価格計算の基礎に算入しないとする規定があります(租税特別措置法)。
最後に,「鑑定は必要でしょうか?」とのご質問に対してですが,200年以上経つ由緒あるものでも,偽物の場合もありますし,また,必ずしも経済的価値があるとは限りません。さらに言うと,その由緒あるものの保管状況等によっては,評価額や売買価格が大幅に下がることもありえます。
相続や贈与する場合は,売買実例価額や精通者意見価格等を参酌して評価しますので,鑑定評価が必要な場合もでてくると言えるでしょう。
【回答者】
益子良一 税理士法人コンフィアンス代表社員税理士