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【書評】『麻酔における気道管理の手技と知識を知る』臨床麻酔での気道管理のすべてを網羅した1冊

No.5127 (2022年07月30日発行) P.69

川股知之 (和歌山県立医科大学麻酔科教授)

登録日: 2022-07-27

最終更新日: 2022-07-26

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麻酔科医から切っても切れないのが気道管理である。全身麻酔の3要素を達成するためには呼吸機能の低下は避けられず,いかなる困難な状態でも安全・確実な気道管理が求められる。麻酔科医が“気道管理のプロ”と自負する所以である。

本書はその“気道管理のプロ”による1冊であり,臨床麻酔での気道管理のすべてを網羅した内容となっている。第1章では,気道管理に必要な解剖・生理が臨床に即した内容で解説されており,第2章以降の理解が進むように工夫されている。第3章では各種困難気道管理のガイドラインの要点がまとめられ,添付のQRコードを読み取ることによってガイドラインにアクセスできる。第4~8章では,麻酔中の基本的な気道管理法から応用までまとめられている。動画での解説は大変わかりやすい。また,昨今の状況をふまえてCOVID-19等の呼吸器合併症の気道管理の解説は大変参考になる。

第9章は手術別の気道管理である。第1章~第8章までの内容の実践編である。気道管理に注意を要する病態・術式と対応法が解説されている。まさに明日の臨床に役立つ内容である。そして,第10章は動画を用いた気道管理トレーニングがテーマである。第9章や第10章はこれまでの書籍にもありそうでなかった内容で,本書の特徴のひとつではないだろうか。

私は書評を依頼されて本書を読み始めたが,内容は盛り沢山ながら各項目が4~5ページにコンパクトにまとめられており,また図表と動画が多用され読みやすく理解しやすいと感じながら一気に読破してしまった。電子版も利用可能で,手術室で少し困ったときにもスマホで閲覧可能なのもよい。

日常臨床はもとより,麻酔科専門医試験(筆記・口頭試験)にも大いに役立つ珠玉の1冊である。内容もさることながら,最後の編者紹介の中山禎人先生の近影もいい味を出している。中山先生と私の学生時代と麻酔科研修時代を久しぶりに思い出した。

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