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化膿性脊椎炎[私の治療]

No.5127 (2022年07月30日発行) P.47

細金直文 (杏林大学医学部整形外科学教授)

登録日: 2022-07-29

最終更新日: 2022-07-26

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  • 化膿性脊椎炎は,他臓器の感染巣から細菌が椎体終板に達し椎体・椎間板に炎症が波及する疾患である。血行性感染が最も多く,尿路感染,化膿性関節炎,腹部疾患,皮膚・軟部組織感染などから波及する。罹患部位としては腰椎,胸椎,頸椎の順に多い。比較的稀な疾患とされているが,高齢者やimmunocompromised hostの増加,またMRIの普及などにより本疾患と診断される患者は増加傾向にある。
    症状としては,急性期には発熱や罹患部位の疼痛が生じ,安静時の痛みや体動困難なほどの痛みを生じうる。膿瘍が拡大し脊柱管内に波及した場合は神経症状をきたす。また,炎症が椎体,椎間板に波及し骨破壊を生じると変形や神経症状を生じうる。

    ▶診断のポイント

    まずは本疾患を疑うことが重要である。米国感染症学会(IDSA)が報告した診断と治療に関するガイドラインでは,下記5つの状況で本疾患を疑うとしている1)

    ①新規に生じたもしくは悪化する腰背部痛,頸部痛と発熱,②新規に生じたもしくは悪化する腰背部痛,頸部痛と赤沈,CRP高値,③新規に生じたもしくは悪化する腰背部痛,頸部痛と菌血症もしくは感染性心内膜炎,④腰背部痛の有無にかかわらず発熱と新規の神経学的異常所見,⑤黄色ブドウ球菌による菌血症の既往を伴う新規の腰背部痛,頸部痛。

    画像検査としてまず単純X線を行う。経過とともに3~6週で椎間板腔の狭小化や椎体終板の不整像,椎体高の減少などが出現するが,初期には明らかな所見を認めない場合が多い。初期診断も含めてMRIが有用で,T1強調画像で椎体や終板,椎間板が低信号,T2強調画像では高信号になる。また,STIR(short T1 inversion recovery)では,より高い感度で炎症に伴う骨髄浮腫が描出される。

    ▶私の治療方針・処方の組み立て方

    治療の基本は,硬性コルセット等による局所の安静と抗菌薬投与による保存治療であるが,起炎菌の同定は治療成績に大きく影響するために極力,抗菌薬開始前に検体を採取する。抗菌薬の治療を行っているにもかかわらず菌血症が改善しない場合や神経障害,変形などが認められる場合は手術を検討する。

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