細菌性髄膜炎の主な原因となる肺炎球菌・インフルエンザ菌b型に対する予防接種が日本でも定期接種化されたことで頻度は激減したが,重症度と後遺症の点から,見逃せない疾患である。また早期乳児でのB群連鎖球菌や大腸菌,VPシャントなど頭蓋内医療デバイスおよび頭蓋外傷関連の細菌性髄膜炎も忘れてはならない。
症状としては意識障害を含めた神経症状が,身体所見としては髄膜刺激徴候が各々ポイントになるが,特に医療デバイス関連髄膜炎では発熱以外の症状・所見がみられないこともある。髄液検査には,他の検査では代替できない情報があり,施行を多少でも迷うような状況では,検査したほうがしないより後悔が少ない。
疾患の重症度,後遺症の重大性を鑑みて,多少でも細菌性髄膜炎の疑いが残る場合は,症状の経過や細菌培養結果から否定できるまでは,細菌性髄膜炎をカバーした治療を行う。一方,治療前に細菌性髄膜炎の可能性が高い場合は,ステロイドの併用も考慮する(後述)。
敗血症を伴う場合や,痙攣等の重大な神経症状を伴う場合は,呼吸・循環・神経に対する支持療法が重要になる。
起因菌判明前の抗菌薬初期選択は,基礎疾患の有無,および患者年齢により想定される菌に対しempiricに行うが,疾患の重大性から(失敗した場合,後がないため)広域抗菌薬を選択せざるをえない。具体的には,ペニシリン耐性肺炎球菌を想定したバンコマイシン,アンピシリン耐性インフルエンザ菌b型を想定した第3世代セフェム系,ESBL(基質特異性拡張型βラクタマーゼ)産生大腸菌を想定したカルバペネム系といった選択である。
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