サーファーズイヤー(外耳道外骨腫)は,外耳道の慢性的な冷水刺激によって生じる皮質骨の過形成である。通常,両側性に多発する。サーフィン以外でも,水泳,ダイビング,カヤックなどマリンスポーツ愛好家や海洋,河川での職業従事者にみられる。冷水刺激を受けた期間に比例して病変は緩徐に増大していく。通常は無症状だが,病変が高度になり外耳道の自浄作用が障害されると外耳炎,耳痛,耳漏,耳垢栓塞,伝音難聴などを生じうる。
サーファーズイヤーは予防可能な疾患であり,リスクファクターを知った上で耳栓を使用するなどして,外耳道が冷水刺激を受けないよう注意することが重要である。病変が無症状で見つかった場合は定期的なクリーニングを行う。ある程度の大きさになると外耳炎を繰り返すようになり,その都度抗菌薬点耳など保存治療が必要となる。保存治療抵抗性の場合や高頻度に外耳炎を繰り返す場合は,手術加療を考慮する。耳後部アプローチで外耳道皮膚を挙上し外骨腫を削開する。鼓膜穿孔,感音性難聴,耳鳴,顔面神経損傷が合併症として起こりうるため,有症状であり再発を繰り返す場合を手術適応とする。
サーファーズイヤーは通常は無症状であり,外耳炎や耳垢栓塞を続発し,耳痛,耳閉感,難聴をきたして医療機関を受診する。耳鏡による観察で,外耳道に表面平滑で骨様の硬い隆起を認めることで診断できる。大きさに程度の差はあるが,両側性に多発している場合が多い。CTでも当該部位の骨の隆起と外耳道狭窄を認める。
耳鏡所見,CTでおおむね診断は容易であるが,骨腫,外耳道肉芽,外耳道腫瘍(良性,悪性)などが鑑別に挙げられる。骨腫とサーファーズイヤーは視診,理学所見,画像所見ともに類似し鑑別は難しいが,骨腫はサーファーズイヤーのリスクを持たない患者に一側性,単発性に発生することが多い。外耳道表面の変化に乏しい腫瘍性疾患との鑑別が必要となる場合もあるが,サーファーズイヤーでは皮膚直下が骨様に硬い点から鑑別できる。骨ほどの硬さではない隆起性病変では,CTを撮影し病変が軟部組織であれば腫瘍を疑い,最終的には生検で鑑別する。
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