【質問者】
木原武士 洛和会音羽リハビリテーション病院神経内科 部長
パーキンソン症候群とは震え(振戦),初動の遅れ・緩徐な動作(動作緩慢),筋緊張の亢進(筋固縮)などの運動症状(パーキンソニズム)を呈する疾患の総称ですが,運動症状自体を指すパーキンソニズムと同義で使う場合もあります。したがってPDはパーキンソン症候群に含まれますが,同時に,PDの臨床像に類似する疾患が多く存在し,実際の臨床では多系統萎縮症(multiple system atrophy:MSA),進行性核上性麻痺(progressive supranuclear palsy:PSP),大脳皮質基底核変性症,薬剤性パーキンソニズム,中毒性パーキンソニズム,正常圧水頭症などが主な鑑別疾患と考えられます。
PDでは運動症状の程度に左右差を有するとされますが,MSAおよびPSPのパーキンソニズム優位型(それぞれMSA-PとPSP-P)でも病初期には運動症状の左右差が認められます。また,安静時振戦もPDの特徴とされますが,MSA-PやPSP-Pでも認められ,薬剤性パーキンソニズムでも稀に出現します。PDの他のパーキンソン症候群と異なる点としてL-dopaに対する反応性が挙げられますが,PSP-Pの運動症状もL-dopaにより改善を示します。このようなことから,運動症状のみではパーキンソン症候群の鑑別が困難である場合も少なくありません。PDの誤診率はかかりつけ医で47%,PDを専門としない神経内科医で25%,PD専門医で6~8%と報告されています1)。個々のパーキンソン症候群において,特にパーキンソニズム以外の特徴をふまえてPDとの鑑別を進める必要があると考えます。
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