タイトル【在宅診療でこそ使える漢方薬】の“こそ”に熱き思いがあると感じた。“こそ”は,上に付く語を強調するために使用される。
本コンテンツは,在宅診療での症例が取りあげられており,普段の外来診療とは異なる,在宅診療で“こそ”の漢方薬の選択方法や変更のタイミングを学ぶことができる。さらに,なぜその選択や変更に至ったか丁寧な解説が加えられている。さらにさらに,その解説を理解するために必要な在宅診療(患者)と外来診療(患者)の違い,漢方理論の基礎知識や副作用なども示される。
しかも,いわゆるクドい説明になっていない。漢方薬を好まない先生方の中には漢方独特の用語や理論を,根本から学ばねばならないと考え抵抗される方もいる。私自身も漢方や鍼灸を広める活動を行っているが,少な過ぎず多過ぎず,クドい説明にならないように注意することは案外難しい。この点において,家庭医療研修を経て,10年以上の在宅診療や漢方薬の講義,書籍出版など豊富な経験を有する著者ならでは“こそ”の解説はとてもわかりやすく,コンパクトにまとまっている。
他にも,注目ポイントがある。それは,いわゆる「次の一手」が示されている点である。例えば,BPSDなど精神神経症状に頻用される抑肝散や抑肝散加陳皮半夏の次の一手が示されている。もちろんここにもわかりやすい解説が付いている。ぜひ本コンテンツで学んでいただきたい。
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に対する漢方薬も示され,守備範囲も広い。これらも経験豊富な著者だから“こそ”わかりやすく提示できていると感じる。
以上のように端的明快にまとめられた在宅診療特化型の本コンテンツは,在宅診療に関わる先生方の大きな力になると思われる。私も電子書籍である利点を活用し,訪問診療前に“こそこそ”っと見直し,日々の診療に役立てたい。