ジストニアは運動障害のひとつで,持続性の筋収縮に特徴づけられる症候であり,動作の異常あるいは姿勢の異常として観察される。身体におけるジストニアの分布から,局所性,分節性,多巣性,片側性,全身性に分類される。また随伴症状に基づいて,孤立性(ジストニアのみを示す),複合性(ミオクローヌスなどの他の運動障害を合併),複雑性(精神発達遅滞などの運動障害以外の症状を合併)に分類される。複合性ジストニアには,症状が発作的に出現するもの(発作性ジストニア)や高いレボドパ反応性を認めるもの(レボドパ反応性ジストニア),顕著なパーキンソニズムの合併を認めるもの(ジストニア・パーキンソニズム)など,ユニークな臨床症状を示す病型も含まれる。局所性ジストニアの治療ではボツリヌス治療が推奨される。ボツリヌス治療や内服治療に抵抗性の場合,外科治療を考慮する。
ジストニアに特異的な診断マーカーは現時点で存在しない。診断においては,まずパターンのある動作・姿勢の異常(たとえば繰り返し頸部を右に回旋させる,繰り返し右手首を屈曲させる,等)を確認することが重要である。感覚トリック(たとえば頰に手を添えると斜頸が改善する)や,動作特異性(たとえば書字の際にジストニアが出現するが,箸やキーボードは問題なく扱える)の存在もジストニアの診断を支持する。古典的には筋緊張異常を表面筋電図で証明することになるが,症状によっては評価が難しいことがある。
臨床の現場で遭遇することが多いのは孤立性の局所性ジストニア(斜頸,眼瞼痙攣,書痙)であるが,それらは各種画像検査,髄液検査等で異常を呈さないことがほとんどである。
小児期発症のジストニアではレボドパの反応性を確認することがきわめて重要である。顔面下部に強いジストニア,頸部~体幹を反らすようなジストニアでは,遅発性ジストニア(ジスキネジア)の可能性を考える(抗精神病薬内服の既往の聴取は重要である)。全身性あるいは家族性の場合は,遺伝性ジストニアを考えて遺伝子異常の検索を考慮する。発作性ジストニアでは,家族歴,乳児期の痙攣の既往,発作のトリガー(急に体を動かす)の聴取が必要であり,ビデオを撮影して受診時に確認することも有用である。
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