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新しい頭痛発症抑制薬「抗CGRPモノクローナル抗体」による片頭痛治療─フレマネズマブ発売後早期のリアルワールドデータ(3カ月投与も含めて)[学術論文]

No.5139 (2022年10月22日発行) P.30

菊井祥二 (富永病院脳神経内科副部長/パーキンソン病治療センターセンター長/脳卒中センター副センター長)

團野大介 (富永病院頭痛センター副センター長))

竹島多賀夫 (富永病院副院長/脳神経内科部長/頭痛センターセンター長/富永クリニック院長(兼任))

登録日: 2022-10-24

最終更新日: 2022-10-20

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    2021年8月にガルカネズマブ,エレヌマブに続き,フレマネズマブが発売された。

    フレマネズマブは片頭痛病態に関連するカルシトニン遺伝子関連ペプチド(CGRP)を標的としたモノクローナル抗体であり,先行の薬剤と同様に高い有効性と安全性がみられる。

    富永病院頭痛センターでは発売後7カ月間で87例に使用し,6例では3カ月1回投与を試みている。

    有効例は68例(78.2%)で,従来の治療ではきわめて難治であった症例でも著効することがある。

    ガルカネズマブやエレヌマブの無効例~低反応例でもフレマネズマブへの変更で効果がみられる症例もある。

    3カ月投与は,1カ月投与と同等の有効性があり,通院日数を減らすことができるため,就労世代,子育て世代に多い片頭痛患者には,有効な投与方法である。

    1. はじめに

    片頭痛は,日常生活に支障をきたす頻度の高い神経疾患である。通常,生命を脅かすことはないが,個々の患者の生活の質は大きく障害され,社会全体に与える経済的影響も大きい。

    わが国では,2000年に片頭痛の特異的急性期治療薬であるトリプタンが認可されて以降,片頭痛予防薬(発症抑制薬)としてCa拮抗薬(ロメリジン)が開発され,また,世界標準の抗てんかん薬(バルプロ酸),β遮断薬(プロプラノロール)が片頭痛予防に適応追加となり,片頭痛治療は大きく更新した。

    頭痛の診療ガイドラインも整備され,エビデンスに基づいた片頭痛治療が推進されているが,まだ十分に恩恵を受けていない片頭痛患者は存在する。カルシトニン遺伝子関連ペプチド(calcitonin gene-related peptide:CGRP)について,片頭痛発作直後の頸静脈中CGRP濃度が対照群に比して有意に高値であったことや,片頭痛患者へのCGRP投与による片頭痛様発作誘発の報告から,CGRPの片頭痛病態への関与が示唆されている1)2)。近年,片頭痛患者のアンメットニーズに対応するため,新規治療の開発が進み,CGRPやCGRP受容体を標的にしたモノクローナル抗体が開発された。これらの抗体薬は片頭痛病態の本態である三叉神経血管系に直接作用し,投与により片頭痛の発現が抑制されることが示された。

    わが国でも2021年4月に抗CGRP抗体であるガルカネズマブの発売が開始され,高い有効性と安全性が確認され,8月には抗CGRP受容体阻害薬のエレヌマブと抗CGRP抗体のフレマネズマブが発売された。フレマネズマブは現時点ではわが国で唯一の3カ月投与が可能な薬剤である。

    本稿では,富永病院頭痛センターにおける同薬発売後7カ月間における3カ月投与を行った症例も含めたフレマネズマブの特徴と,使用経験について述べる。

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