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【書評】『診断研究の方法論』診断推論に興味がある専攻医,診断研究をやってみたい臨床医にお勧めの1冊

No.5140 (2022年10月29日発行) P.63

野口善令 (豊田地域医療センター教育顧問)

登録日: 2022-10-30

最終更新日: 2022-10-27

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RCT(randomized controlled trial,ランダム化比較試験)を代表とする治療を評価する研究やリスク,予後に関するコホート・ケースコントロール研究には,それなりの歴史を経て研究の方法論が整備されているのに比べて,診断研究はいまだ発達途中にある。また,診断研究の結果を臨床に応用するにしても,実際の臨床医の診断思考プロセスが過度に単純化されているため現実との乖離が著しく,多くの誤解,誤用とピットフォールが生まれてしまう。

このように問題山積みな診断研究ではあるが,それでもその理論を理解することで,診断推論のシステム2(推論の部分)が鍛えられ,診断能力が向上するのは間違いない。

本書で扱われている診断研究のタイプは,①診断精度研究,②診断予測モデル研究,③付加価値を評価する診断研究,の3つである。

①では感度・特異度,尤度比,ROC曲線分析といった今までの診断の性能を表す指標について研究の概要が整理,俯瞰されている。疾患の進行度や重症度,患者特性,診療セッティングによって異なってくること,感度,特異度は代理アウトカムであり単なる目安にすぎないこと,尤度比を掛け合わせて事後確率を計算できないこと等のピットフォールにも言及されている。

②,③では,近年盛んになっている予測モデルとその発展型である付加価値の評価が紹介され,これからの診断研究の方向性が示されている。さらに詳細なハンズオンが記載され,コンピュータソフトを使って診断研究の解析が体験できる(フリーソフトR,RStudioやデータのダウンロード用リンク付き)。

後半はやや難易度が高くなるが,本書で学習することで,頭の中が整理され診断思考プロセスがよいものになり,さらに研究への糸口にもなるだろう。

診断推論に興味がある専攻医,診断研究をやってみたい臨床医にお勧めの1冊である。

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