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結節性紅斑[私の治療]

No.5145 (2022年12月03日発行) P.45

金澤伸雄 (兵庫医科大学皮膚科学講座主任教授)

登録日: 2022-12-02

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  • 皮下脂肪織の炎症により,発赤・熱感・疼痛を伴う多発性の皮下硬結を生じたもので,症候名であると同時に独立疾患名でもある。病理組織学的には,脂肪小葉間隔壁優位の炎症細胞浸潤を認める。血管炎や脂肪変性は伴わないが,慢性病変では線維化や肉芽腫性変化も認める。成人女性の下腿に好発し,発熱や関節痛を伴い急激に発症する。潰瘍は形成せず数週間で自然軽快するが,再燃を繰り返すこともある。

    溶連菌をはじめサルモネラやクラミジアなどの細菌,結核菌やらい菌などの抗酸菌,真菌,ウイルスなどの感染症に罹患後,あるいはサルファ薬をはじめとする抗菌薬やスルホニル尿素,経口避妊薬,ヨード造影剤,BRAF阻害薬などの薬剤を摂取後に発症し,Ⅲ・Ⅳ型アレルギー性の機序が想定されている。また,サルコイドーシスやベーチェット病,クローン病などの基礎疾患に続発することがあるため,治療抵抗性の場合は眼,胸部,腹部などの病変も検索する。生検にて非乾酪性類上皮細胞肉芽腫を認めれば「結節性紅斑様」皮膚サルコイドーシス,異型リンパ球が脂肪細胞を取り囲むように浸潤していれば「皮下脂肪織炎様」T細胞リンパ腫である。そのほか,バザン硬結性紅斑やウェーバー・クリスチャン病,うっ滞性脂肪織炎,蜂窩織炎,スイート病,血栓性静脈炎,結節性多発動脈炎などを鑑別する。

    ▶診断のポイント

    下肢に好発する脂肪織炎であるが,蜂窩織炎と異なり,アレルギー性炎症による。誘因を見きわめ,両側性・多発性であることで蜂窩織炎と鑑別する。治療抵抗性の場合は,全身性の基礎疾患がないか検索する。

    ▶私の治療方針・処方の組み立て方

    扁桃炎など上気道感染に続発した場合は抗菌薬を投与し,薬剤誘発性が疑われれば被疑薬を中止した上で,安静にして炎症が引くのを待つ。症状の程度に応じて対症療法的に,非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)やステロイドの外用や内服を行う。保険適用外であるが,好中球機能を抑制するヨウ化カリウムやコルヒチンの内服も有効である。重症例や症状が遷延する例では,血液検査や皮膚生検などにより感染症や基礎疾患を除外し診断を確定した上で,ステロイドの内服を行う。

    結核,ハンセン病やサルコイドーシス,ベーチェット病,クローン病,潰瘍性大腸炎,関節リウマチ,シェーグレン症候群,骨髄異形成症候群などの基礎疾患の存在が疑われれば,眼科や呼吸器内科,消化器内科,リウマチ膠原病内科や血液内科など専門科にて合併症の検索など必要な精査を行い,総合的に治療方針を決定する。

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