脳梗塞を含めた脳卒中が寝たきりになる最大の原因であることから,新規治療法の開発が強く望まれている。現在想定されている脳梗塞に対する再生療法は,①脳の可塑性による再生,②内在性神経幹細胞賦活化,③細胞移植治療,の3つに大別できる。まず,脳の可塑性による再生は,脳卒中リハビリテーションの現場で,脳卒中患者が機能回復する過程で実際起きている現象と考えられている。内在性神経幹細胞の賦活化と神経新生も虚血脳内で起きているが,機能的回復に寄与するだけの新生ニューロンを誘導するためには,神経栄養因子などの投与も必要と考えられている。細胞移植治療に関しては,骨髄間葉系細胞,iPS細胞,iN細胞などが移植細胞源として有望であるが,いずれの細胞種も一長一短である1)。
脳梗塞治療に関しては,札幌医科大学の研究グループや韓国で,自己骨髄由来間葉系細胞の静脈内投与の第2相臨床試験が終了し,特に有害事象は認めなかったことが報告されている。そのため現在,有効性を明らかにするための第3相臨床試験が実施中である。また,東海大学の瀧澤俊也教授が主導し,筆者らも共同して,内在性骨髄細胞の誘導を主な目的とした,脳梗塞急性期患者に対する顆粒球コロニー刺激因子(G-CSF)静注療法の臨床研究を行ったが,その結果は改善傾向がみられたものの有意差を示すまでには至らなかった2)。今後のさらなる検討が期待されている。
【文献】
1) Yamashita T, et al:Cell Transplant. 2014;23(4-5): 435-9.
2) Mizuma A, et al:J Stroke Cerebrovasc Dis. 2016; 25(6):1451-7.
【解説】
山下 徹 岡山大学脳神経内科講師