皮膚悪性黒色腫の外科的治療においては,原発巣の確実な切除と所属リンパ節転移への対応が重要である。原発巣の深達度が深くなるにつれて予後は悪く,リンパ節転移の頻度も上昇する。発生部位により主に頸部,腋窩,鼠径,膝窩リンパ節が所属リンパ節となる。
原発巣の確実な切除を行うためには,全切除生検で組織学的に腫瘍深度を確認し,適切な切除マージンを設定する。部位,腫瘍の大きさによっては生検による組織診断を行わず,広範な切除を行わざるをえないこともある。
色素法,RI法によるセンチネルリンパ節生検は標準治療であり,現在では悪性黒色腫と乳癌で保険適用になっている。センチネルリンパ節生検によって,従来行われていた予防的郭清の頻度は減っている。近年,インドシアニングリーン(indocyanine green:ICG)を腫瘍周囲に注入し,近赤外線カメラで撮影することで,リンパ管やセンチネルリンパ節の同定が可能となった。従来法と併用することでさらに検出精度も上がり,リンパ流に応じた郭清範囲の設定ができるようになった。
外科的治療の進歩とともに,分子標的薬による治療が可能となりつつあり,免疫チェックポイント阻害薬による治療も加えて,薬物療法への期待も高まっている。
【参考】
▶Ishihara K, et al:Int J Clin Oncol. 2001;6(3): 109-16.
▶Balch CM, et al:J Clin Oncol. 2009;27(36): 6199-206.
【解説】
1)秋本峰克,2)武田 啓 北里大学形成外科・美容外科 1)講師 2)主任教授