日本では医療や社会の発展によって寿命が延び,「人生100年時代」と言われるまでになりました。まだ誰も経験したことがない長い,長い老後です。最期の日までどのように生き,どのように逝くのか……。手本となる人もいない中,多くの高齢者が不安を感じています。そうした状況でも,自分の暮らす地域が「病気や障害があっても,住み慣れた家や環境で自分らしく生きていける場所」になれば,高齢者は安心して最期の日まで生きていけるのではないでしょうか。
人生の中で私たちは思いがけず,命に関わるような大きな病気やケガをすることがあります。命の危険が迫った状態になると,約7割の人が自分の意思を伝えることができなくなるそうです。そのような状況において,医療に関わる自らの希望を尊重してもらうことはできないのでしょうか。家族をはじめ,医療・ケアチームと繰り返し話し合い,本人の希望や意思を共有する取り組みのことを,厚生労働省は「人生会議」と名付けました。万が一のとき,どこでどのような医療やケアを受けたいのか,周囲の信頼する人たちに事前に知っておいてもらうことが大切です。