有害妊娠転帰に伴う心血管系(CV)疾患リスク上昇はよく知られており、2021年には米国心臓協会(AHA)も注意喚起の学術見解を公表している。
しかしこのCVリスク上昇が何歳くらいから認められるかを示すデータはない。そのような認識のもと有害妊娠転帰を有する女性の脳卒中発症年齢を検討したデータが、2月8日から米国ダラスで開催された国際脳卒中学会でEliza C Miller氏(コロンビア大学、米国)により報告された。有害妊娠転帰を経験した女性では、若年脳卒中リスクの有意上昇が認められた。
解析対象となったのは、フィンランド全国レジストリであるFINNGEN研究から抽出した経産婦13万764名である。初産時年齢平均値は全体で26.8歳、出産回数平均は2.2回だった。これらを有害妊娠転帰の有無で分け、長期の脳卒中発症状況を比較した。妊娠転帰と脳卒中はそれぞれ、公的データベースと付き合わせて確認した。
各群の内訳は、有害妊娠転帰「なし」が82.3%、「1回」経験が14.9%、「複数回」経験が「2.8%」だった。
上記3群間では背景因子が異なり、妊娠有害転帰群のほうがCVリスクは高かった。
これら13万764例の5.4%が、出産後52年間で脳卒中を発症した(出産後1年以内に発症した脳卒中は除外)。3群間の発生率曲線は40歳時にはすでに乖離を始めており、55歳前後まで差は開き続けた。
脳卒中初発の年齢中央値は、有害妊娠転帰「なし」が58.5歳、「1回」は54.6歳、「複数回」ならば51.3歳という若年だった(群間差の検定示されず)。
そこで「45歳以下」脳卒中初発リスクを検討すると、諸因子補正後オッズ比は、有害妊娠転帰「1回」群で「なし」群に比べ1.7(95%信頼区間[CI]:1.4-1.9)、「複数回」群では2.1(1.5-2.8)の有意高値となっていた。
上記の結果はいずれも、一過性脳虚血発作(TIA)を除外しても同様だった。
Miller氏は有害妊娠転帰が脳卒中リスクを上昇させるファクターであるのかどうかは不明としながらも、脳卒中高リスク例を特定するマーカーとしての有用性を強調していた。
本研究には申告すべき資金提供はないとのことである。