本連載第5回(No.5144)でも取り上げたように,2022年9月20日,ウガンダ共和国保健当局は,9月19日にウガンダ中央部Mubende地区Madudu小郡の村において,スーダンエボラウイルス(Ebola disease caused by Sudan ebolavirus:SUDV)によるエボラ出血熱の発生を確認し,その発生を宣言しました。
エボラウイルス病は,エボラウイルス(フィロウイルス科)による流行性熱性疾患で,高い致死率(CFR:約50%)を伴うことが特徴です。エボラウイルスは,ザイール,ブンディブギョ,スーダン,タイフォレスト,レストンおよびボンバリの6型が同定されており,記憶にも新しい2014〜16年の西アフリカにおけるアウトブレイクを起こしたウイルスはザイール型に属しています。ザイール型のエボラウイルスに対しては,研究も盛んに実施され,ワクチンによる予防や抗ウイルス薬による治療が確立しています。
しかしながら,ウガンダで発生したスーダン型のエボラウイルスは,研究が不十分のため確立した予防や治療がなく,ウガンダ国内はもちろん,近隣諸国などウガンダ国外への感染拡大や重症患者の発生が懸念されていました。
幸いにも,2023年1月11日ウガンダ政府は,ウガンダ中央部のMubende地区で最初の症例が確認されてから4カ月未満で,スーダンエボラウイルスによって引き起こされたエボラウイルス病の流行の終息を宣言しました。
合計164例(確定例142例,可能性例22例)が発生し,確定例と接触した4000人以上に対して,21日間の追跡健康調査が実施されました。最後の確定例が確認された11月30日以降42日間,新規患者の発生がなく,1月11日に終息宣言がなされました。死亡確認77例(確定例55例,可能性例22例),回復患者87例,確定例の致死率(CFR)は38.7%(55/142)でした。ウガンダは,世界保健機関(WHO)やその他の支援機関の協力のもと,これまでの長年の経験により,感染を認めた9つの地区で迅速に対応し終息に至りました。
アウトブレイク終息後もフォローアップが大切です。ウガンダ政府は,終息宣言後も監視を維持し,再燃があれば迅速に対応する準備を行っています。また,生存者をサポートするフォローアッププログラムも導入されました。近隣諸国は警戒を続けており,発生を検出し対応する能力を引き続き強化することが推奨されています1)。
冒頭にも述べましたように,ウガンダで発生したスーダン型のエボラウイルスは,確立した予防や治療がありません。そのため,地方からウガンダの首都であるカンパラまで感染拡大した際に,いつか自国へ感染拡大してしまうのではないかと心配した関係者は少なくなかったかと思います。正しい知識を身につけ,正しく恐れることが大切です。
・これまでも,エボラウイルス病の発生は散発的に,主にアフリカ国内で発生しています。
・発生した地域で感染拡大すると,近隣諸国や,往来のある国への感染拡大の可能性があります。
・今後も,エボラウイルス病の発生に注視し,感染拡大防止に努めていきましょう。
【参考文献】
1) WHO:Uganda declares end of Ebola disease outbreak. (2023年1月13日アクセス)