降圧薬ディオバンの臨床研究不正を巡る混乱の責任を取り、前理事長が2014年に辞任した日本高血圧学会。学会幹部が不正研究を用いた広告に頻回に登場したことが批判を浴び、ついには学会OBや半数の理事が理事長退任を求める意見書を提出。学会は大きく揺れた。梅村敏氏(横浜労災病院長)は、14年10月に理事長に就任。就任会見では「社会の批判を真摯に受け止めて学会を改善していきたい」と改革に意欲を示した。今年10月1日の社員総会をもって理事長を退任する梅村氏に2年間の取り組みを聞いた。
理事長に就任した当初、変革の柱として、(1)透明性の確保、(2)患者さんの立場に立った医療を実現し、専門家集団として社会の信頼を得る、(3)高いレベルの高血圧研究─を掲げ、特に(1)(2)を優先的に取り組みました。
具体的には①臨床研究の不正防止策、②役員選出方法の改革、③情報発信の迅速化、④「高血圧・循環器病予防療養指導士」制度の開始、⑤水銀血圧計製造中止に伴う電子血圧計の検証、⑥国際高血圧学会(ISH)の誘致活動─などです(編集部注:2022年ISH総会が京都市で開催されることが9月25日に決定)。
理事長に就任してすぐに、「研究活動に係る倫理行動規範」を作成し、会員は公正な研究活動を行うことを明文化しました。このほか、人を対象とする医学系研究Q&Aの作成、ワークショップの開催など、公正な研究を行うための指針を作成し、学会のホームページで公表しています。今後は、こうした指針を実践していくことが大事です。
残り1,688文字あります
会員登録頂くことで利用範囲が広がります。 » 会員登録する